中国会計・税務実務ニュースレター 第4回
中国国家税務総局は、2015年3月18日に「企業の国外関連者への費用支払に係る企業所得税問題に関する公告」(国家税務総局公告[2015]16 号、以下「16 号公告」)を公布し、これに応じて各地域において税務調査が行われています。今回は、税務調査における思わぬ落とし穴シリーズの第一弾として技術指導料の税務調査事例及びその対応ポイントを紹介します。
1.事例
➢調査対象会社の概要
中国法人B社は、精密電子部品の製造を行う日本親会社A社に、年間10万ドルの技術指導料を支払っている。B社には、A社からの出向者5名が在籍しているが、毎月A社からの出張者数名による生産指導を受けています。
➢税務調査
16号公告に基づき、税務局は税務調査を行い、以下の資料及び説明等を要求しました。
- ①技術指導者へのインタビューによる技術指導内容の聞き取り
- ②技術指導の成果物の提供
- ③出向・出張者リスト、役職、給与および中国滞在履歴の提出
- ④中国国内の技術コンサル会社と契約する場合の類似業務の内容、単価の違いに関する説明
2.中国子会社B社の対応及び税務局の指摘
➢中国子会社B社の対応
税務局の要求に対し、中国子会社B社は主に以下のように対応しました。
- ①常駐の総経理と工場長(日本親会社からの出向者)が税務調査官を工場に案内し、生産工程・技術指導の内容について口頭にて説明
- ②財務部長は次の資料を提出
・日本人全員の業務日報と給与明細
・日本本社からの出張者の中国滞在期間リスト
- ③技術指導員の出張スケジュール
- ④技術指導料の金額が日本本社により決定された旨の口頭説明
➢税務局の指摘
B社の上記の対応を受け、税務局は以下のような問題点を指摘しました。
企業所得税法および16号公告により、B社の生産活動がB社の社員(出向者:常駐の総経理及び工場長)により行われている以上、A社から受けた技術指導は重複サービスに該当するため、損金算入を否認する。
3.落とし穴及び対応ポイント
本件において中国子会社B社の税務調査対応における主な落とし穴と対応ポイントは以下の通りです。
- ①中国子会社の業務遂行能力の拡大説明
- 日本親会社A社から中国子会社への出張者による技術指導には、現に中国子会社が有している技術以上の技術営業、日本親会社が時間とコストをかけて構築したノウハウ(生産工程図、品質管理・不良回避技術/工程・企業秘密等)を、子会社と共有(独立第三者に提供できないもの)するためのものが含まれています。中国子会社が認識している現状のみに基づき税務局に説明すると、技術指導の範囲が狭くなり、中国子会社の現状における技術水準について誤解を与える傾向があります。従って、対応ポイントとしては、各種の業務フローにおける技術指導の役割の説明が重要で、親子会社双方が協力して税務調査に対応することがポイントになると思われます。
- ②定量分析が比較的簡単であるのに対して、定性分析が困難であること
- 実際の税務調査においては、設計レベル、作業人員の能力等を評価する定性分析が困難なため、税務局は作業時間・人数、図面の数量、業務日報の有無等に基づく定量分析を重視する傾向がみられます。従って、日本本社も、税務局に反論可能な定量分析資料を整備すべきと思われます。
お見逃しなく!
2015年9月17日、国家税務総局は「特別納税調整実施弁法」意見募集文を公布し、現行の「特別納税調整実施弁法」(2号文)を全面的に修正したうえで、パブリックに意見を募集しています。当該意見募集文には、関連者間役務提供の章を初めて設けた16号公告の内容が取り込まれています。今後、関連者間役務提供の移転価格に関する規制は、より一層客観的かつ厳格になると思われます。
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