中国会計・税務実務ニュースレター 第2回

 

1.前提

日本法人A社は、同社の100%中国子会社であるC社株式を、A社のアジア地域統括会社である100%シンガポール子会社B社に譲渡することを検討しています。A社がB社から受領するC社株式の譲渡対価は、すべてB社株式とする予定です。今回は、このケースにおける中国の課税関係について検証を行いました。

 

2.特殊税務処理の取扱い

今回のようなクロスボーダー持分買収について、原則として以下の要件を満たすことでA社は特殊税務処理を適用し、課税の繰延ができる可能性があります。

 

◆ 特殊税務処理要件(注釈1)

イ) 合理的な再編目的が存在すること

ロ)譲受側(B社)に移転する株式は、対象企業(C社)が発行する株式の75%以上であること

ハ)買収により譲渡側(A社)の株主が受ける持分による支払いは、全体取引価額の85%以上であること

ニ)再編後の12カ月間、再編資産の実質的経営活動が変更されないこと

ホ)持分買収後の譲渡所得の源泉徴収税額負担に変化をもたらすことがないこと

ヘ) 譲渡側(A社)は3年以内に譲受側(B社)の株式を譲渡しない旨の書面による承諾書を税務機関に提出すること

 

A社は今回のクロスボーダー持分買収が適用要件を満たすとして、税務局に事前照会を行ったところ、税務局はホ)の要件を満たさない、つまり「譲渡所得の源泉徴収税額負担に変化をもたらす可能性がある」として特殊税務処理の適用可能性を否認しました。

 

3.源泉徴収税額が変化する場合

特殊税務処理の適用を税務局が認めるかどうかは、A社がC社の持分を譲渡した後に、中国が譲受側のB社に対して将来行使できる課税権がポイントとなります。つまり、譲渡側のA社に対する課税を今回の再編において繰り延べたとしても、B社において将来生ずる譲渡所得に対する課税権を失わなければ、中国としては今回の課税繰延べは容認できます。 
ここで中国とシンガポールの租税条約を確認してみると、株式譲渡に係る源泉地国の課税権は、譲渡前の12カ月間における25%以上保有が条件とされています(注釈2)。このように、シンガポールとの租税条約において中国の課税権を制限しているため、税務局がこの点を「源泉徴収税額負担に変化をもたらす」と判断し、特殊税務処理の適用を不可と判断したのです。

A社は税務局の上述の判断を受けて特殊税務処理の適用を見送り、譲渡所得の課税については10%の企業所得税を中国において納税し(注釈3)、A社の日本の法人税の確定申告時に外国税額控除の適用を受けることとしました。

 

お見逃しなく!

中香租税協定(注釈4)においても類似した規定があるためにB社が中国香港の子会社である場合においても「源泉徴収税負担に変化をもたらす」と判断される可能性が生じます。B社が日本の子会社である場合、日中租税条約(注釈5)においては、源泉地国において租税を課することができると規定するのみで、課税上の条件を付加していないため、「源泉徴収税負担に変化をもたらない」というホ)の要件はみたすこととなります。

 

注釈1. 『 中国財政部、国税総局企業再編業務における企業所得税処理の若干の問題についての通知』(財税[2009]59号)

注釈2. 中国シンガポール租税条約第13条

注釈3. 企業所得税法実施条例第91条

注釈4. 第13条

注釈5. 第13条

 

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