中国進出日系企業における 中国人人材活用の話 第5話

 

 今回は、日系企業の現地化を促進 する上で、一つの武器となりうる「ローカルバックスキーム」と呼ばれている人材育成手法についてお話させて頂きます。「ローカルバックスキーム」とは、一定期間、日本本社にて技術や日本語、日本本社の「考え方」を習得した後、中国現地法人で幹部候補として活躍してもらう人材育成スキームのことで、弊社でも最もお問い合わせの数が多く、実際に活用されている企業様も数多くいらっしゃいます。

 

日本企業の課題

 

 中国に進出している日系企業は、欧米系企業に比べ、中国人の総経理が少ないと言われております。これは、日系企業の「現地化」の遅れを象徴している現象と言えるでしょう。かつて、日系企業が中国に進出しはじめた頃、日系企業の取引先は、系列の企業や系列でなくとも日系企業がほとんどでしたが、中国の市場が急速に拡大し、技術進歩も目覚ましい現在においては、ローカル企業と戦略的に取引を進めていくことが、日系企業の成長の鍵になっていると言っても過言ではありません。その為には、日本人の力だけでは限界があり、現地の事情に精通している中国人の存在が非常に重要です。

 

日本人駐在員の不足

 

 中国市場が成熟に向かう中で、日本 人駐在員に求められるレベルは年々高くなっており、日本国内での人材不足、駐在希望者の減少、中国のビザ要件の厳格化という厳しい状況の中で、今後、慢性的な日本人駐在員不足が予想されます。更に、日本人駐在員はコストもかかる上、現地法人の重要な意思決定が日本人駐在員のみによって行われるという体質が続けば、現地で働く中国人のモチベーションにも影響することから、日本人駐在員にこだわり続けるよりも、優秀な中国人を育成する方向にシフトしていくことが、今後の日系企業の課題と言えるでしょう。

ローカルバックスキーム

 

「ローカルバックスキーム」は、中国人人材に来日してもらい、日本本社で様々な「日本流」を身に着けてもらった上で、中国現地法人で日中の架け橋となってもらう様な人材を育成することが狙いです。現地法人の中国人従業員に対して、半年から1年程度、日本で研修を行うという企業様もいらっしゃいますが、日本本社の意向を汲み取りながら、現地法人を引っ張っていけるような人材を育成する為には、最低でも2~3年間は、日本本社で「修行」をすることが必要でしょう。また、日本語や具体的な技術(スキル)だけでなく、日本本社の「考え方」を身に着けさせるためには、やはり、頭のやわらかい新卒・第二新卒のうちに日本に呼び寄せるのが望ましいと思います。

 

成功のポイント


 ずばり、ロイヤルティの醸成が、このスキームの成否を決定づける最大のポイントとなります。「中国人は、日本人に比べて企業に対するロイヤルティを醸成しにくい」というような意見も聞かれますが、中国社会の成熟とともに、「1元でも高いところがあれば転職する」という考え方は減少し、「自分を大事にしてくれる企業で、長く働きたい」と言った考え方が増えてきているように感じます。そして、このスキームを成功させている企業は、必ずと言っていいほど、長期的な視点で人材育成に取り組んでおり、日本人の新卒同様(またはそれ以上に)、育成計画を練りこみ、彼らを非常に大事にしています。このことが、5年~ 10 年後、彼らが現地法人で活躍する頃に、大きな違いとなって現れます。逆に、せっかく来日させても、彼らの重要性が、日本本社の現場レベルにまで共有されていないと、彼らはそれを敏感に感じ取り、転職をしてしまうという失敗にもつながります。

最後に


「ローカルバックスキーム」は、国を跨ぐ人材育成手法であることから、全社的な意思統一も不可欠であり、簡単に成功できるものではありません。しかしながら、長期的な視点に立って様々な工夫をしていく中で、世界的な人材争奪戦を勝ち抜いていくヒントが見えてくるかもしれません。

 


引用:
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