5Gを巡る覇権争い

 

 スマートフォン市場の低迷が世界的に続いている。米IDCによると、第3四半期(7〜9月)の世界スマートフォン出荷台数は前年同期比6%減の3億5520万台。4四半期連続の減少となる。特に中国市場の減少が顕著で、6四半期連続で前年同期を割り込んでいるという。スマホ普及率の高い中国ではすでに需要が一巡したということだろうが、「2020年までに本格的に開始される予定である5G(第5世代移動通信システム)を意識した買え控えによる影響も多い」(日系商社幹部)とみられる。

 

19年が各社にとって勝負の年に

 

 各社が急ピッチで開発を進める5Gは、通信速度が毎秒10ギガビットと、4Gに比べて10倍〜100倍になり、時差は0・001秒と4Gの10分の1に縮まる。通信の遅れがほとんどないので、自動運転やロボットの遠隔操作などの精度が向上するという。5Gが実用化されると、モノのインターネット(IoT)や仮想現実(VR)などの普及がさらに加速するだろう。

 

 そうしたなか、5Gを巡り米国と中国の覇権争いが激化している。米中貿易戦争ぼっ発の背景には、5G産業を巡る米中の主導権争いがあるとの指摘もあるほどだ。米紙ウオールストリート・ジャーナルは9月14日付で「米国は、4G競争をリードしていなければ、モバイル技術やそのプラットフォームでの現在の優勢はなかったかもしれない。インスタグラムやスナップチャット、そしておそらくフェイスブックやネットフリックスですら世界的な存在になっていなかった可能性もある」と指摘している。その成功体験を踏まえ、米国には、5Gで出遅れれば世界の競争において後塵を拝すという危機感があるのだ。米国市場からファーウェイや中興通訊(ZTE)を締め出したのは、中国政府への情報流出やサイバー攻撃の危険性があるからだとしているが、5Gの覇権争いで優位に立ちたいという側面もあるのだろう。ZTEやファーウェイについては、日本政府も入札対象から除外する方針を固めたほか、英国をはじめとする欧州や豪州も米国に同調する動きがある。

 

 これで米国が優位に立つかと思いきや、そうともいいきれないようだ。米インテルやシスコシステムズをはじめとするIT企業が米通商代表部(USTR)に文書を提出し、中国に対する追加関税がルーターやスイッチなどの製品コストを引き上げ、5Gの発展を減速させると主張しているのだ。それだけIT業界において、中国の影響力が大きいということである。

 

 開発を進めているのは米中だけではない。日本や韓国、スウェーデンも当然、力を入れている。NECは10月24日、サムスン電子とグローバル市場に向けた5Gポートフォリオ拡大のための協業に同意したと発表した。また、富士通は10月26日、スウェーデンのエリクソンと5Gネットワークおよび関連サービス提供に向けて、戦略的パートナーシップを結ぶことで合意したと発表した。両社はまずは日本市場で展開し、さらに世界中の市場への適用拡大を目指すとしている。5Gを巡る覇権争いは、ますます競争が激化しそうだ。

 

 

 5Gは各国で試験が行われているが、米国では、年内にも複数都市で稼働を開始する予定だ。また、平昌五輪で実証試験を行った韓国では、19年3月に運用を開始する予定だ。日本では、各社とも19年夏ごろにプレサービスを開始し、20年春から順次商用化していく計画だ。一方、中国では中国聯通が16都市、中国移動が5都市で5Gの試験を行っているが、19年第3四半期の商用化を目指している。そのスピードで広大な中国大陸に基地局のネットワーク網を張り巡らさせるのは容易ではないが、それを可能とするのは、通信キャリアが国有であることと政府の強力なサポートがあるからだろう。

 

 端末メーカーもそのタイムスケジュールに合わせて動いている。各報道によると、米クアルコムのスティーブン・モレンコフ最高経営責任者(CEO)は11月6日、「2018スマートテクノロジー産業国際提携フォーラム」で2019年中に商用化を実現すると発言。OPPO、ファーウェイ、小米など中国の大手各社は、19年に5Gに対応した機種を発売する計画であり、それらにはクアルコムの新型ミリ波アンテナモジュール「QTM052」やモバイルチップが搭載されることになるだろう。

 

 富士キメラ総研は、5Gデバイスの世界市場は23年には26兆1400億円へと拡大し、5G基地局の世界市場は、同4兆1880億円へと拡大すると予測する。将来が約束された5G市場において、覇権を握るのはどの国になるのか。その答えは、早ければ年中に明らかになるだろう。


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