中国進出日系企業における 中国人人材活用の話 第3話

 

 日本では、著しい少子高齢化に より空前の人手不足となっており、読者の皆様の中には、中国現地法人で就労している従業員を日本法人へ送り込めないものかと、思案されている方もいらっしゃることと思います。実際に、そのようなご相談を頂くことが最近特に多くなりました。そこで今回は、中国法人の従業員を日本法人へ出向(転勤)させる際のビザの手続きについて、在留資格「企業内転勤」を中心に、注意点も含めてお話させて頂きたいと思います。

 

 「企業内転勤」は「技能実習」に比べ、提出書類も少なく、手続きにかかる時間も短いため、出向(転勤)の際は、はじめに「企業内転勤」を検討されることをお勧めします。

 

 出向元(中国法人)と出向先(日本法人)の間の資本関係について一定の要件があり、また、出向元で直近1年以上の就労経験が必要となりますが、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で求められる学歴(大卒)要件はありません。ただし、法律上は「技術・人文知識・国際業務」と同じレベルの専門性が要件となっており、一般事務やいわゆる単純労働は認められません。そのため、学歴が高卒以下である場合、業務そのものが一定の専門性を有することの説明はもちろんですが、その従業員が実務経験等により、専門的な業務に従事できるだけの「業務遂行能力」を有していることについても慎重に立証する必要があります。この点、一定規模(カテゴリー2)以上の企業については、原則、雇用契約書等の添付書類が不要で、詳しい業務内容についても説明する必要がありませんので、実態としては専門性の低い業務であるにもかかわらず、申請が許可される(されてしまう)ケースがあります。しかしながら、「企業内転勤」の在留資格を持つ従業員を専門性の低い業務に従事させている事実が発覚すると、企業側が「不法就労助長罪」に問われる可能性があり、厳しい罰則を科されることもあります。従って、業務の専門性が低いと思われる場合は、事前に入国管理局や行政書士などの専門家に相談されることをお勧めします。

 

 また、給与額についても注意が必要です。「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」が要件となっており、最低賃金程度では、専門性のある業務とはみなされません。給与額についての明確な基準はありませんが、月額 18 ~ 20 万円程度が一つの目安になると思われます。中国法人から給与が支払われることや中国と日本の二本立ての給与になることは、問題ありません。ただし、その場合は、中国で支払われる給与に対する日本側での課税関係や労働保険料・社会保険料等の取扱いについて、事前に税理士や社会保険労務士などの専門家に相談されることをお勧めします。

 

 専門性の低い業務に従事させる場合は、在留資格「技能実習」を検討することになります。「技能実習」については、昨年 11 月に施行された「技能実習法」によって、優良な実習実施者や監理団体については、実習期間が最長3年から5年に延長されるなどの優遇措置が設けられた一方で、「外国人技能実習機構」の新設や監理団体の許可制など、管理監督体制については強化されました。新法施行後に、入管法違反により技能実習計画の認定が取り消され、実習生の受入れが5年間禁止された企業も出てきております。当局も取締りを強化しておりますので、実習生を受け入れる場合は、社内の管理体制も含め慎重に制度を利用することが必要です。

 

 最後になりますが、昨年の高度人材に対する永住許可基準の緩和や新たな在留資格創設に向けた最近の政府の動きなどを見ておりますと、今後、日本は外国人労働者の受入れを拡大していくことは間違いないと思われますが、一方で、2016年の入管法改正により在留資格等の不正取得に対する罰則が創設されるなど、外国人の受入れ緩和と管理体制の強化は、一体として進められております。外国人労働者をいかに活用するかということが日本企業の死活問題にもなりうる昨今において、法律に則った形で外国人を受入れることは、今後ますます重要になっていくものと思われます。

 


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