シリーズ : メコンの経済回廊 [2014_1月(Jan)]



    「タイは産業集積が進み、完成車生 産の優位性は揺るがない。しか し、矢崎総業がカンボジアにも進出したよ うに、部品産業にとっては今後、労働集約 工程を周辺国に展開する方が低コストとな る」。

    タイ国トヨタの棚田京一社長はこう述 べ、競争力強化のために、部品産業の周辺 国展開は必然の流れ、との見方を示す。

    タイの労働集約工程を補完するタイプラ スワンとして各社が注目したのはカンボジ アだった。タイでの操業が長い電子部品の ミネベアやワイヤーハーネスの矢崎総業が 2010 ~ 11 年に進出を発表したことが呼 び水となった。

    ラオスにも2013 年初頭にはトヨタ紡織 やニコンがタイ国境のラオス側サワンナ ケートへの進出を決めたことから、注目が 集まっている。日系企業専用工業団地も今 年には完成の見込みだ。



カンボジア、タイ・中・越のプラスワンに

    カンボジアには、製造業の受け皿として 22 カ所の経済特区(SEZ)がある。カンボ ジアは、適格投資案件(QIP)企業として 認められると、法人税(20%)の免税を 最大9年間受けられるほか、輸出加工産業 の場合には原材料、建設資材、生産設備の 輸入関税が免税となる。SEZ 入居のメリッ トは付加価値税(10%)が、輸入時に免 税されることだ。SEZ 外の操業企業は輸出 時に還付できるが、実質的には難しい。こ こがSEZ で操業するかどうかの分かれ目 だろう。このほか、投資申請や原材料の輸 出入手続きがワンストップで受けられる。

    ミネベアはプノンペンSEZ に進出。日 系企業だけで40 社近くが入居している同 SEZ は、タイプラスワンとして進出する企 業がある一方、ホーチミン市からベトナム プラスワンとして進出した着物工場がある ほか、中国からの企業も。まさにプラスワ ンの交差点だ。プノンペンはバンコクから 700km だが、ベトナム・ホーチミンから はわずか250km にすぎない。

    カンボジアの特長は、プノンペンと海港 のあるシアヌークビルを除くと、国境に SEZ が展開されている。これは同国の電力 の半分はタイやベトナムから輸入されてい るなど、国境の方がインフラが整っている ことにある。ホーチミンからプノンペンを 経由しバンコクまで950km、さらに来年 にはインド洋のダウェーまで通じる南部経 済回廊が、日本の支援で整備されつつある ことから、この沿線への進出が加速するの は間違いない。

    同回廊沿線のベトナム国境バベット地区 のマンハッタン工業団地では2007 年、ベ トナムから進出した自転車製造業が進出し た。自転車の欧州連合(EU)向けの輸出 にベトナムでは一時、反ダンピング税が課 せられたことから、優遇が受けられるカン ボジアへ横展開した。同地区はホーチミン 市からわずか70km の距離にある。部材や 完成品の輸出入、電力もベトナムのインフ ラだ。その後、カンボジアで適応される一 般特恵関税(GSP)狙いの衣料メーカーが 進出し、同団地を含むバベット地区には、 チャイナプラスワンで日本の時計関連産業 の集積も始まっている。

    一方で円借款で建設したシアヌークビル 港SEZ は昨年完成したものの2社しか入 居企業が決まっていない。1㎡当たりの地 代が65 米ドルとカンボジアで最も高いこ とがネックとなっているほか、港があるメ リットを生かし切れていないようだ。



ラオス、進出の重心が南へ

    ラオスでのSEZ の輸出加工型企業は黒 字化から10 年間の法人税免除のほか、そ の後も8%(通常は24%)の優遇税率が 適用される。

    これまで製造業投資は首都ビエンチャン 近郊に集中していたが、今後は南のサワン ナケートへと比重が移りそうだ。

    日本の政府開発援助(ODA)による「第 2メコン国際橋」(ラオス・タイ国境)の 開通がサワンナケートの発展に弾みをつけ た。サワンセノSEZ はA ~Dの4つのゾー ンに分かれるが、マレーシア系企業が開発 するサイトCのサワンパークのほか、サイ トBでは日系製造業専用の「サワン・ジャ パン経済特区」が開発中で、ニコンが入居 する。ニコンはデジタル一眼レフ普及機を ラオスで組み立てるが、最終工程はタイ・ アユタヤのロジャナ工場で行い完成し、タ イ製品として世界中に供給する。ニコンの 協力工場も同特区への関心を示している。

    当面の販売価格は1平方メートル当たり 25 米ドル(約2,500 円、75 年の使用権) とし、今後の開発でも40 米ドル以内に抑 える方針で、タイプラスワンの受け皿とし て注目される。

    一方、ミャンマーではタイ・プラスワン の動きが直近では見られない。電力・工業 団地不足に加え、国境は山岳地で交通イン フラが整っていないためだ。

    ジェトロの調べでは、製造業ワーカーの 月額賃金に手当などを含めた金額は、タイ の557 米ドルに対してラオス188 米ドル、 カンボジア119 米ドル、ミャンマー92 米 ドル。周辺国に対して3倍以上の開きがあ る。タイの最低賃金引き上げは、タイの労 働集約型産業がラオス・カンボジアへと工 場移転を促す一方、ラオス・カンボジアで は若者たちが「1日300 バーツ」に惹か れてタイに流れ込む。

    また、ある進出した企業は、「生産拡大 には寄与しているが、必ずしもコスト削減 にはなっていない」と指摘する。原材料の 現地調達化が進んでいないことと国境を超 えることで発生するコストが依然として高 いためだ。進出する際の課題だろう。

    記事提供/ NNA http://www.nna.jp/copy-of-home 




タイ周辺国の工業団地 ②

ミャンマーの工業団地、
ティラワ・ダウェー経済特区に期待



「日系製造業の本格投資は、ティラワ経済特区(SEZ)が完成する2015 年以降」
こんな声が、ミャンマー投資を検討する企業関係者の「通説」となって いる。電力や物流インフラ不足は当然と考えても、最大の難点は、工業 団地・用地が不足していることだ。それだけに、日本の官民が開発する 最大都市ヤンゴン近郊のティラワSEZ への期待も大きい。以下にミャ ンマーの工業団地と新たなSEZ 計画の概況を説明する。(遠藤堂太)


    ミャンマー工業省は、計画中も含め全 国45 ヶ所の工業団地を認定。この うち最大都市ヤンゴン市を含むヤンゴン管 区には24 ヶ所ある。

    ミャンマーで現在、唯一国際基準を満た すのは、三井物産が開発し、現地企業が運 営しているヤンゴンのミンガラドン工業団 地。ただ、すでに満杯の状態だ。インフラ が比較的整った日系企業の進出先は、ヤン ゴン市内のラインタヤー工業団地など、限 定されるのが実態だ。

    ミャンマーは工業団地といっても名ばか りで、「排水処理や電力は自前で」という ところが多い。タイやベトナムであれば、 団地運営会社が管理。企業が廃業などで工 場を売却する場合の用地転売に関しては厳 格に管理されている。しかし、ミャンマー の工業団地は、転売しながら利ざやを稼ぐ 投機目的で購入されるケースが多いため、 「工業団地は満杯だが、空き地が多い」と いう状況を引き起こしている。ヤンゴンの 工業団地は1㎡当たり75 ~ 85 米ドル程 度で取引されており、ベトナムやカンボジ アの水準と比べても高い。

    こうした状況からミャンマーの市場や労 働力の潜在性を有望視する企業は「工業 団地に新工場建設」というスタイルにこ だわっていない。2015 年稼働予定の日産 自動車は、ヤンゴン近郊の工業団地外で稼 働する予定だし、衣料のハニーズは、経営 の立ち行かなくなったヤンゴン工業団地内 のインド系工場を買い取り、法人設立から 1ヶ月後には工場を稼働させた。

3つのSEZ

    日系企業の進出ハードルは現時点で高い ミャンマー。そこで期待が高まるのが、税 制優遇なども含めて外資誘致を図るSEZ だ。輸出加工産業には原材料の免税輸入恩 典や法人税の計10 年間の減免を盛り込む ことが、国会審議中だ。

    SEZ は西部ラカイン州チャウピュー、ヤ ンゴン近郊ティラワ、南部タニンダーリ管 区ダウェーの3つを計画。なかでも、ティ ラワは三菱商事、丸紅、住友商事やミャン マー企業が出資する企業体が創設され、今 年2014 年早々にも第1期分(約200 ヘク タール)の販売が開始される。ティラワ港 に面した地の利もあり、日本企業が得意と する電子・車両部品の輸出加工型産業の集 積に期待が高まる。

    ダウェーSEZ はバンコクから300 キロ 強の距離にあり、14 年秋にはタイからの 道路も完成。タイにとってはインド洋への 玄関港となる期待もある。現在は重化学工 業を誘致する前段階として、軽工業団地の 造成を進めており、14 年末にも販売を開 始。タイの建設最大手イタリアンタイ(ITD) とアユタヤの工業団地開発で実績のあるロ ジャナが担当する予定。

    一方、中東原油の積み替え港やミャン マー沖合のガスを中国へパイプライン輸送 する拠点であるチャウピューSEZ の計画 は遅れており、造成に至るにはなお、時間 がかかりそうだ。中国国境ムセまでの800 キロを結ぶ鉄道や道路が開通しない限り、 発展は厳しい状況だ。しかし、ミャンマー 政府は、2014 年の着工を計画している。



    記事提供/ NNA http://www.nna.jp/copy-of-home 


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