シリーズ : メコンの経済回廊 [2014_7月(Jul)]



2年半で雇用1200 人に、住友電装

    2011 年6月に「スミ(カンボジア)ワ イヤリングシステムズ(SCWS)」を設立 した住友電装。敷地面積3万平方メート ル、床面積1万5,000 平方メートルの工場 で室内系自動車用ワイヤーハーネスを生産 している。中国への生産集中リスク回避の ため、法人税が6年間免除となるほか、部 材輸入の関税なしといった優遇措置や中国 の3分の1という廉価な人件費を強みとす るカンボジアへ進出を決めた。

    ワーカーは地方の農村を回って募集し、 現在の雇用数は1,200 人。2月時点では工 場の半分しか使用していなかったが、15 年3月期のフル稼働体制をめざし、人員を 最大1,600 人まで増やす計画という。

    ただ人材育成は大きな課題だ。当初は 13 年度中をフル稼働の目安としていた が、「生活習慣やしつけ、チームワークを ゼロから教育しなければならず、事業拡大 が当初計画通りに進まなかった」(大野木 憲一総務部長)ことから先に延ばした。

    会社に勤めたことの無い若者が多い新入 社員には、技術指導の前に規則正しい生 活、トイレでの手洗い、作業を中断する際 の互いの声掛けといった基本的な習慣を身 に着ける就業前研修に約1カ月をかける。 また全従業員のうち5%は母国語であるク メール語の読み書きができないため、毎週 定時後に語学クラスを開講している。

    こうした取り組みの成果で、操業から丸 2年が経過した現在では熟練の技術が必要 となる日本向けレクサスのインパネハーネ スの生産も手掛けるようになった。



本格的な製造拠点へ

    現時点でPPSEZ と入居契約を交わして いる企業は66 社。うち日系は37 社で28 社が操業している。141 ヘクタールの第1 フェーズは完売し、新たに12 年に募集を 始めた第2フェーズ(162 ヘクタール)は 半分が契約済み。自前の発電施設を備えて おり、入居企業は発電機を持たなくても安 定した操業が可能だ。 PPSEZ ではミネベアが11 年末にOA・家 電・デジタル機器向けモーターの生産をス タートしたほか、中小企業でもワイヤー ハーネスメーカーや、自動車部品向けプラ スチック射出成型メーカーなどが稼働。「最 近は自動車部品メーカーが 視察に訪れる ケースが目立ち、グループのほか個別に来 る企業もある」(PPSEZ の上松裕士最高経 営責任者・CEO)

電力不足とスト、カンボジアの越国境バベット

    カンボジア進出に当たってネックとして 指摘される脆弱(ぜいじゃく)な電力イン フラ。現在の電力自給率は約6割。輸入に 依存しているため、電気料金は全国平均で 近隣のラオスやベトナムの2~3倍、タイ の1.5 倍に達する。

    ベトナムのタイニン省モクバイと国境を 接するスバイリエン州バベットには、中国 から進出する企業向けに複数のSEZ が開 業。安価な労働力や一般特恵関税(GSP) の優遇措置を享受できる利点があるほか、 ホーチミン市まで約90 キロ足らずと日本 へのリードタイムがプノンペンより短く、 借地料もプノンペンの半分程度と安いこと からアパレルメーカーなどを中心に約16 社の日系企業が操業している。ここでも瞬 間停電が1日に何度となく発生している。 バベットで比較的インフラが整っている とされるのがマンハッタンSEZ(310 ヘク タール)だ。操業する企業にとって瞬電は 悩みの種で、コストは高いが現状では多く の企業が自家発電で対応している。マン ハッタンに隣接するタイセンSEZ(125 ヘ クタール)にある縫製工場を訪れた際に は、短い1時間ほど間に数回電気が落ち た。エアコンがほとんど効いていない工場 の内部は熱気が充満していたが、熱心にミ シンに向かう従業員の姿が印象的だった。 こうした電力事情を抱えつつも、日本貿易 振興機構(ジェトロ)プノンペン事務所の 伊藤隆友アドバイザーによると、カンボジ アでは中国の支援で20 年までに18 の発 電所が稼働する見込みだ。政府は3年後に ベトナムからの電力輸入をゼロにする目標 も掲げる。

労働者ストは沈静化

    電力インフラに加え、昨年末に激化の様 相をみせた労働者デモが企業の不安感を高 めた。

    政府高官は、「最低賃金引き上げ要求ス トが頻発した裏には昨年の選挙で負けた野 党が納得せず、反政府的な人々を扇動して 労働者のデモに動員するという動きがあっ た」と説明する。バベットではそれ以前、 12 年7月の総選挙前からスト活動が頻繁 に起きており、一部では給与水準がプノン ペンを上回るほど上昇していたとの見方も ある。

    ただ3月以降、状況は沈静化しているも よう。ジェトロの伊藤氏によると、進出企 業の増加で、出稼ぎに出ていた人がプノン ペンから戻ってくる傾向にあり、労働人口 は増えている。賃金も全体でみると全国で 突出していることはないとし、逆に「バベッ トの人口は現在2万~3万人だが、スバイ リエン州全体からの流入で将来的に20 万 人都市になる可能性がある」と成長性を指 摘する。

    バベットでは新たにドラゴンキングSEZ (200 ヘクタール)の造成も進む。日本精 密のほか時計製造関連企業が計7社ほど集 積する見通しで、生産基地としての整備は これからだ。これまでカンボジアの産業と いえば縫製業一辺倒だったが、タイや中国 など周辺国で賃金上昇という流出圧力が高 まる中、企業は待ったなしで流れ込んでい る。その流れに押されるかのように、ゆっ くりとではあるが本格的な日系製造業の受 け皿に成長を遂げつつあるようだ。

    記事提供/ NNA http://www.nna.jp/copy-of-home 




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