シリーズ : メコンの経済回廊 [2015_12月(Dec)]



    ミャンマー最大都市ヤンゴン市の南東20キロにあるティラワ経済特区(SEZ)が9月23日、開業した。日本が官民を挙げて支援してきた特区は、外資投資の呼び水になると期待されている。第一号となる江洋ラヂエーター(名古屋市)の工場が同日稼働、先陣を切った。ミャンマーでは南部のダウェー、第二の都市マンダレーなど各地の開発も待たれている。




    ティラワの開業式には、麻生太郎副総理兼財務相も出席。「ミャンマー経済の発展と雇用創出につながる重要なプロジェクトだ」と強調した。特区の総開発面積は約2,400ヘクタールで、開業したのは先行開発区ゾーンAの396ヘクタール。用地の7割は既に埋まっており、進出する47社の約半数は日本勢。エースコック、スズキ、王子ホールディングス、ワコールなどが進出する見通しだ。ミャンマーのニャン・トゥン副大統領も 「世界の投資家に門戸を開いている」と呼び掛ける。

    日ミャンマー合弁の開発母体ミャンマー・ジャパン・ティラワ開発(MJTD)が2期目となるゾーンBの開発を検討することで、関係者による覚書も結ばれた。ゾーンBは500~700ヘクタールとなる見込みで、2016年末の開発着手を目指す。

    ミャンマーでは南部のダウェー、西部のチャウピューでも経済特区が計画されているが、本格的な開発に至っていない状況。ティラワは住友商事、丸紅、三菱商事の3社が工業団地開発を担い、日本の政府開発援助(ODA)で電力や水道などのインフラも整備。日本が官民を挙げて支援し開業にこぎ着けた。

    ティラワでは日本の保険3社が特区内限定で営業許可を得たり、特区に進出した企業に国内への卸売りを認める通達が出たりと、「外資開放の実験場」としても期待されている。

ダウェーも日本に期待

    南部のダウェー経済特区の開発でも日本政府は今年7月、計画を主導しているミャンマー、タイの両政府と、日本が開発に協力する内容の覚書を交わした。ミャンマー軍政末期に開発権を得たタイのゼネコン大手イタリアンタイ・デベロップメント(ITD)による資金調達失敗で頓挫していたが、かねて期待されていた日本の参画が表明され、再び動き出した。最終的に2万ヘクタールを開発する壮大な計画だ。

    ITDの当初の開発計画に対しては地元団体などが、石炭火力発電所建設による環境への悪影響や、住民移転に反対していたが、日本の参画表明で地元政府や産業界から「透明性の高い開発が期待できる」と歓迎の声が出た。

    ダウェーがあるタニンダーリ管区のミャット・コー首相は取材に、「日本の参画で迅速かつ効率的に開発が進み、地域の人々に早期に恩恵が及ぶよう望む。まずは道路や電力供給網の整備が欠かせない」と期待を示した。ダウェー空港から市内、市内から開発地へと続く道路はここ数年で整備が進んだ。大動脈となるタイ国境への道路整備が待たれている。

    ダウェーはミャンマーの最南部に位置し、ヤンゴンなど主要都市から遠いが、インドシナ半島を貫く国際道路「南部経済回廊」の西端として、タイのバンコクとの連携による発展を期待する声が強い。タイの政府や経済界、ダウェーの地元財界も国境道路の開通でバンコクとの経済的な結びつきが強まることを期待する。一方、主要都市ヤンゴンやマンダレーの開発を重視したいミャンマー政府の胸中は複雑だ。

    もう一つの経済特区開発予定地である西部ラカイン州のチャウピューでは、昨年7月に開発マスタープランが発表された。総開発面積は7,500ヘクタール。第1期は2025年の完成を見込むが、現地報道によると、開発の着手は来年以降にずれ込む見通しだ。

    特区の運営委員会は、開発業者を選ぶ入札で12社から応募を受けており、開発は深海港、住居地区、工業団地の3つに分かれ、3社に発注する意向だが、選定が遅れている。チャウピューは中国向けの天然ガス輸送パイプラインの起点で中国の影響が強いとされる地域で、特区開発に応募したのも大半が中国系企業とされる。

マンダレーでも大型開発

    ミャンマー政府が開発を急ぎたいのが、第二の都市マンダレーだ。2011年の民政移管後、外国投資流入はヤンゴンに偏ってきたが、マンダレーは人口が多く、伝統的に機械や繊維といった産業集積もあり、発展の潜在力が大きい。

    マンダレーはミャンマーの 「へそ」に位置する物流上の要衝。ヤンゴンまでを結ぶ高速道路と鉄道が走り、エーヤワディ川も流れる。中国との国境貿易が盛んなムセまでを結ぶ道路の起点でもある。

    マンダレー国際空港は今年から、三菱商事などが運営に乗り出した。8月にはコマツが市南部の日系で初めて、ミャンマー最大といわれるマンダレー工業団地に鉱山向け大型車両のエンジン再生工場を設けている。

    市の南西では、マンダレー管区政府の後ろ盾を得たマンダレー・ミョータ工業開発社(MMID)が、ミョータ工業団地(MIP)と河川港セメイコン 港を開発している。マンダレーで初となる近代的な工業団地を整備する計画だ。

    来年初めにも一部が稼働する見通し。MIPにはすでに台湾やシンガポールなどの企業が工場を建設中で、経済特区ではないものの、外資製造業の投資先として期待される。

    近代的なインフラを整え、近接地にはゴルフ場や住宅地も開発する計画で、開発地の総面積は約4,500ヘクタールとなる見込み。現在はマンダレー市内から高速道路や一般道を走って1時間半ほどかかるが、将来は港と工業団地、国際空港を結ぶ大型道路も整備され、大幅な時間短縮が見込まれている。

    ミャンマーに進出する日系企業は250社を超えるが、実際に製造を行うのは縫製を中心に 10数社程度。ティラワ経済特区を皮切りに今後、近代的な工業団地が各地で開発され、道路などのインフラ整備も進めば、自動車などの分野でも製造業投資が本格化しそうだ。(NNAミャンマー版の記事を元に、同編集部が再編。写真はNNA撮影)


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