計測に関する豆知識 第4回
本連載では、ものづくりに欠かせない「計測」に関して、豆知識的な情報をテーマにしています。今回は『幾何公差』についてのお話をさせていただきます。
<幾何公差の必要性>
日本のものづくりは世界的に高く評価されていますが、図面指示に関しては2000年初頭から改善が進められています。それまでの図面には、ある情報が不足しているケースが多かったのです。下図は、不十分な図面に従って加工を行った場合に起こり得るトラブル例です。
図1.のように、図面に寸法公差しか指示がない場合、事例Aも事例Bも要求を満たしていることになりますが、実際には組み合わせの不具合や機能を満たせないために避けたい加工部品ですね。このような曲がりやテーパ形状を避けるために必要になるのが、『幾何公差』の指示です。
<幾何公差について>
表1.は、JIS規格に規定されている幾何公差および図示記号です。また、幾何公差には単独形体と、データムを必要とする関連形体の区分けもあります。
単独形体は、理論的に正しい幾何形体からの狂いの大きさを示しています。例えば真円度は、形体cを二つの同心の幾何学的円で挟んだ時の半径差fと定義されています(図2.)。
さて、皆さんは真円度をどのように評価されていますか? マイクロメータやシリンダゲージを使われているのが多いのではないでしょうか? その方法は直径法と呼ばれ、複数方向の直径を求め、最大値と最小値の差を真円度としています。比較的簡単に測定が行えるため重宝する方法ですが、等径歪円(直径は等しいが歪んでいる円)の場合には本来の真円度の評価が行えないことを理解しておく必要があります(図3.)。定義に基づいた評価を行うには断面形状を得る必要があり、真円度測定機などが必要になります。このように、測定機器の選定には要求公差などを考慮する必要があります。
もう一方の関連形体は、部品間のはめ合いや機能要求を重視しています。これらの幾何公差には必ず、データム(組み合わせの基準)となる平面や軸、穴が三角記号とアルファベットで指示されます(図4.)。
基準となる面や軸が歪んでいると困ってしまうので、実際にはデータムにも平面度公差や円筒度公差などが指示されているはずです。
はめ合わせ部品としてフランジの多数穴が思い浮かびますが、三次元測定機の普及によって位置度の評価が容易に行えるようになっています。
<まとめ>
図1.の事例の曲がりやテーパ形状を避けるためには、真直度や円筒度などを図面に指示することで不合格として避けることが可能になります。寸法管理はもちろんですが、幾何公差の管理も大切なことが理解いただけたと思います。
幾何公差は通常、寸法公差よりも小さな数値で指示されるため、組み込みは問題なく行えてしまうことが多くありますので、より慎重な管理が求められます。