計測に関する豆知識 第2回

 

 本連載では、ものづくりに欠かせない「計測」に関して、豆知識的な情報をテーマにしています。

 

 前回は測定の基本となる長さの単位「メートル(m)」の定義をテーマにしましたが、今回は「測定環境」についてのお話をさせていただきます。測定機器及び測定結果に悪影響を与える環境要因はいくつかありますが、代表的な要因と対策を挙げます。

 

<温度>

 

 国際工業規格ISOの最初の規格「ISO 1」には、“製品の幾何特性仕様及び検証に用いる標準温度は、20℃であること” の一文だけが定められています。長さの測定は、20℃の環境で行いましょうと最初に定めているのです。このことからも温度環境が重要なことがうかがえますね。

 

 温度は何に影響するのか?ずばり、大きさ(寸法)が変わってしまいます。一般的に物質は温度が高くなれば膨張し、低くなれば収縮するため、何℃で測定を行ったのかは、測定結果の相関をとるために必須の情報となります。

 

 1mの物質が1℃の違いで変化する度合を熱膨張係数と言い、この係数は物質によって異なります。例えば鋼は【11.5×10-6/K】ですが、これは、『1mの鋼が1℃温度変化すると11.5μm伸びる(縮む)』ことを示しています。寸法をμm単位で管理したい場合、この違いは大きいですね。一部の測定機には、20℃環境に換算した測定値を求める【温度補正機能】を有するものもあります。

 

 尚、測定室温は空調機で急速に変更できても、測定機と測定物はすぐには変わらないため、「温度ならし」の時間が必要になります。経験的にも温度が要因となるトラブルは、空調を止めた連休明けが多いようです。高精度な測定では、実際の測定までの前準備も大切ですね。

 

 測定室全体を均一な温度環境に保つことは大変なため、測定機を取り囲む恒温ブースを設置する対策も有効です。

 

<振動>

 

 振動も測定誤差の主な要因になります。特に表面粗さ測定においては振動が触針に乗ってしまい、実際よりも大きな粗さとして誤検出になることがあります。顕微鏡では観察像がブレたり、三次元測定機ではタッチプローブの誤入力になることもあります。特に加工機の近くでは、しっかりとした防振対策が求められます。防振対策として減衰効果のある防振台や防振ゴムを敷設しますが、測定機器はできるだけ振動発生源から離れた堅固な基礎への設置が望まれます。

 

<湿度>

 

 湿度は高すぎると錆が発生しやすくなり、低すぎると静電気が発生しやすくなって電気回路へ悪影響を与える可能性があります。通常、湿度は50~60%が望ましいとされています。また、レーザ計測機では湿度は空気の屈折率を変化させるため誤差要因になりますので、空調管理が必要です。

 

<塵埃>

 

 非接触測定機では塵埃を表面形状として検出するため、測定前の除去と測定中の付着を防ぐ必要があります。また、超低測定力プローブを使った測定機器の場合、塵埃の付着は測定誤差やセンシングエラーの要因となるため、こちらも注意が必要です。ラインサイドに設置されるとオイルミストが測定機内部に侵入してエラーを発生させることもあります。対策としては、測定室の出入り口に前室を設けて土足禁止にしたり、簡易ブースを設置するなどがあります。

 

<空調の送風>

 

 空調の送風向きも気を付けましょう。測定機に直接当たるような送風は避けなければなりません。真円度測定機では回転精度に大きな悪影響を及ぼしますし、三次元測定機のような大型機の場合には温度分布の偏りを招き、これも測定精度の悪化になります。送風が測定機に直接当たらず、測定環境内で温度分布に偏りが生じないような配慮が必要です。

 

<まとめ>

 

 測定に高い精度が求められるようになると高精度な測定機の導入は検討されますが、測定環境については後回しになっていることが多いようです。高精度な測定機の能力を発揮できるよう、測定環境の整備にも十分な配慮を行いましょう。

 


引用:
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