計測に関する豆知識 第1回

 

本連載では、ものづくりに欠かせない「計測」に関して豆知識的な情報をお話させていただきます。


第1 回は測定の基本となる長さの単位「メートル(m)」の定義をテーマにしました。

 

長さの単位「メートル」のはじまり


昔、長さの単位は人の手足などを基準とする身体尺でした。「キュビット」は肘から指先までの長さ、「ヤード」はウエスト回りのサイズ、「フィート」は足の裏の長さ、「尺」は手の親指と中指の先端の長さが由来と言われています。


しかし、取引の範囲が拡大し、ものづくりにおいて高い精度が求められるようになると、共通の基準がないと多くの不具合が生じてしまうため、単位の統一は非常に重要となります。


18 世紀に長さの単位を世界規模で統一する必要性が高まり、1791 年にフランスがメートル(m)という単位を提唱しました。メートルは、ギリシャ語で「測る」の意味のメトロンが語源になっています。


1795 年に、「地球の北極点から赤道までの子午線(地球の赤道に直角に交差するように両極を結ぶ線)の長さの1,000 万分の1 の長さ」を1 メートルと定義しました。では、子午線の長さはどうやって求めたのでしょうか? フランス革命と重なる時期に、パリと同じ経度に位置するダンケルクからバルセロナまでを実際に測量し、北極点から赤道までの90°は計算で算出しています。しかしその誤差はわずか2,000 メートルで、当時の測量技術に驚かされますね。

 

1875 年に、国際的なメートル条約が17 か国の代表によりフランスで締結され、1889 年の第1 回国際度量衡総会にて、実際に子午線の長さを測定した結果から製作された「国際メートル原器」がメートルと定義されました。各地に新しい長さの単位を広めるためには長さの基準器が必要なため、白金とイリジウムの合金製のメートル原器を30本製造し、メートル条約加盟国17 か国の一員であった日本は原器22 番を受け取りました。現在、このメートル原器は日本では重要文化財の指定を受けています。ちなみに、現在の測定時の標準温度は20℃ですが、この時の測定温度は0℃でした。測定するのは大変だったでしょうね。

 

メートルの定義の変遷


メートル原器とはいえ人の作る物体には誤差がありますので、技術の進歩に合わせて不確実さのない定義が求められるようになります。ここで採用されたのが光の波長です。mitutoyo 


1960 年の第11 回国際度量衡総会にて「クリプトン86 元素が真空中で発する赤橙色の光の波長の1,650,763.73 倍と等しい長さを1 メートル」と定義変更されました。


その後、1983 年 第17 回国際度量衡総会で1 メートルは「光が真空中を299,792,458 分の1 秒に進む距離」という現在の定義に変更されました。桁数が多いので、豆知識としては「光が真空中を約3 億分の1 秒に進む距離」と覚えておけば十分でしょう。真空中の光の速度は不変であることと、セシウム原子時計の発明による正確な「秒」が決められたことで、現在の定義になっています。


地球の大きさから始まった長さの単位メートルの定義は、技術の進歩によってより厳密な定義へと移り変わりました。更なる技術進歩によって、今後も定義は変わるかもしれません。

 

次回は、測定環境についてのお話を予定しております。

 

 


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