シンガポールに定着しつつある21世紀型のホコ天

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 2016 年2月に始まった、毎月最終日曜日に市内中心部を歩行者天国にする試み「Car-Free Sunday SG」 が市民に受け容れられている。この試みは、指定エリア内の通行を時限的に歩行者及び自転車、Personal Mobility Device(= PMD、個人移動機器)利用に限定するもので、パダンやラッフルズプレイス、チャイナタウンといったビジネスエリアの一部が主会場となっている。また、長期の道路工事が終了したほかのエリアや、市民の提案によって採用されたストリートなどにも単発的に広がり、次回 11 月は市西部のホーランドビレッジも会場となる。


 会場となった路上や路上近くの公園、エリア内のカフェでは、ランイベントや自転車、ダンス、ヨガ、絵画展など市民による様々なイベントが行われ、月イチの発表と体験をする場となっている。このイベントは、公共交通機関の充実や電気自動車、無人運転車両の導入推進、カーシェアリングの利用推進、さらには徒歩やサイクリングの推奨などを謳った「持続可能なシンガポール基本計画」(15 年)にもかなっている。

 

 

 元来シンガポールは、渋滞緩和のために自動車運転について様々な規制を行ってきた。古くは市中心部に単独で自動車に乗って通勤することを規制、その確認を自動化するために日本企業などを誘致して ERPという通常のスピードでゲートを潜るだけで課金・決済される仕組みを開発し導入。車両購入に至っては、高額の取得税に加えCOE という保有する権利を証券化することで、需給を調整。お陰で、個人の車両購入では世界一高額な国となっている。


 その代わり早期から公共交通機関を拡充。東西線と南北線の通勤電車 MRT が古くからあり、市内バスは場所と時間により10 ~ 20 分に一度同じ行き先のバスが同一のバス停に来なければならないとする規制を敷いてきた。2000 年代初頭から始まる MRT の延伸や新線運営では無人運転を導入。道路は素人にはわかりにくいが、住む人にとってはスムーズになるよう設計されてきた。

 

 今後も引き続き車両保有の権利を増やすつもりはなく、歩行者天国(ホコ天)に至っては、目抜き通りオーチャード・ロードを将来的に完全に車両侵入を禁止にすることも視野に入れている。そのためには公共交通機関のさらなる拡充や、市民の意識改革も必要とされるが、シンガポールの常に少し将来を見つめた姿勢はいまも健在だ。

 

岩田弘志:1998年シンガポールに渡る。引越し会社、メディア会社などでの勤務経験ののち独立。ウェブメディア「シンガポール経済新聞」、「ミャンマーエクスプレス」編集長などを歴任。シンガポール和僑会代表理事も務めていた。現在はシンガポールと日本各地を巡りながら、コミュニティ・ビジネス「セッションX」を立ち上げに勤しんでいる。