いつもそこにある小売業・飲食業の不動産リスク

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先日、福岡天神に出来たばかりのシンガポール・シーフード・リパブリックでシンガポール在住経験のある仲間と飲んでいた際の会話の中で、「ムスタファセンターが閉店した」という話題が出た。ムスタファセンターはインド人街にある24時間営業の巨大なショッピングセンターで、雑多になんでも売られていることから、私は密かに「シンガポールのドンキホーテ」と呼んでいた。しばらく出向いていなかったが、愛着のある店だったので半ば信じた上でさもありなんと残念に思ったのだが、実際は賃貸契約をしていた別館部分だけが建て替えのために契約終了し、まだスペースのある本店内に移転するということで、年末年始にシンガポール人の間で広まった噂が修正されないまま伝わって来たものだった。

 

一方日本の経済雑誌・新聞で時折好業績を報じられる髙島屋シンガポールがいま賃料の設定において建物ニーアンシティのオーナー側と紛争している。転貸している各店舗への賃貸料を検討の大きな要素と捉え、現行の賃貸料の総額を参考とするという髙島屋側と、転貸における賃貸料が最も高く得られる場合を参考にすべきとするオーナー側の主張がぶつかり、裁判は高裁から最高裁へと移っている。

 

またラッフルズホテル内のアーケードに入っていたテナントもホテル全体の改修工事のため立ち退きを余儀なくされていて、同施設内にあった日系ヘアサロンは近隣のショップハウスへ移転した。

 

日本における借地借家法などにみられるような少し賃借側のビジネスの継続に有利な商慣行や法律はシンガポールにはなく、契約書の内容がより重要になってくるということ見てよいが、日本から徒手空拳でやってくる新興の小売店や飲食店などは、決まってこの部分で陥穽に陥る。

 

かつて日系の店舗が多く入居していたギャラリーホテル。

現在はインターコンチネンタルホテルに変わっている

by Jonathan Lin(https://www.flickr.com/photos/rmlowe/)

 

かつて日本人駐在員が多く住むエリア側の飲食エリア、ロバートソンキーにあったギャラリーホテル内では、沖縄料理店、寿司店、鹿児島料理、日本人経営のマジックバー、焼きとり店などバラエティに富んだ日本人経営の店舗が毎晩満席で朝まで何回転もするような隆盛だったが、ある日エリア一帯が売却され、新オーナーのもと再開発によって全店退去を命じられるということがあった。退去における保証は十分ではなく、中では早期退去に応じた店舗は原状回復の必要なしなどというやるせない条件のものまであった。

 

シンガポールで小売店や飲食店を持とうという人には、好業績でもこのようなリスクがあることを予め含んでおく必要があるが、一方こうしたリスクを予め見込んだ進出保険のようなものの登場も望まれる。

 

岩田弘志:1998年シンガポールに渡る。引越し会社、メディア会社などでの勤務経験ののち独立。ウェブメディア「シンガポール経済新聞」、「ミャンマーエクスプレス」編集長などを歴任。シンガポール和僑会代表理事も務めていた。現在はシンガポールと日本各地を巡りながら、コミュニティ・ビジネス「セッションX」を立ち上げに勤しんでいる。

 

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