2012.12 China_Vol.6

新しい中日関係を築く、製造現場での協業と交流

ここ数か月に及ぶ中日二国間の関係悪化に伴い、中国からの撤退や生産拠点を東南アジアなど他の国や地域に移転する動きも伝えられる。しかし、過去約20年にわたり中国と日本双方が努力し作り上げてきたサプライ・チェーンは優位性があり、かつ製造拠点は移せたとしても市場としての中国は決して捨てることができないと考える人も多い。
また、これ以前にも中国における人件費の高騰と労働力不足は、多くの経営者を悩ませてきた。これ1/6ページから中国で戦っていける企業とはどのようなかたちなのだろう。新しくて古いこの命題を、今回は「人1/6ページ材」という側面から考えていくことにする。
FNA会員企業に聞く「 人が活きる組織づくり」
致琦雅橡塑制品(上海)有限公司
今年13年目を迎えた致琦雅橡塑制品(上海)有限公司は、日本の土谷ゴム化成株式会社による100%独資の現地法人。日本本社の研究・開発情報をリアルタイムで共有することで日本同様の品質と技術を提供し、中国でも顧客の信頼を得ている。中国と日本のスタッフ交流も盛んで、中国人技術者の定着率も高い。そこで今回は、董事・総経理 樋之口眞司氏に活力ある職場づくりの秘訣を聞いた。
TEL: 021-5778-1588 http://www.tsuchiya-gk.com.cn/
●スタッフ育成で一番苦労したこと
ゴムは用途に応じて材料から開発します。特に「練り」は工程の要で、非常にきつい仕事が多いうえに、今でも職人技が求められるところです。設立当初は日本から技術者が毎月のように来て1人ずつはりついて教えました。現在は当時からいるメンバーが中核となり品質を支えてくれています。日本のノウハウを開示したこと、また工場周辺の地元の人を採用したこともあり定着率は高いです。いまは社員等の紹介で、優秀な人が入ってくるようになりました。
私たちは日本独資の現地企業ですが、中国の土地と中国のみなさんのマンパワーを借りて操業しています。出稼ぎに来ているのは日本のほうです。だから日本流を押し付けることはしません。たとえ日本語が話せなくても能力があれば管理職に就いてもらいます。現在の社員数は245名で、中国人管理職は30名、日本人は7名で管理職は3名です。現場は中国人スタッフの力で回っています。
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●本社と連動した人と人のつながり
仕事は人が行うものなので、本社の従業員と仲がよいほうが効率が上がります。技術職の日本研修はもちろん、営業であっても日本に顧客がいて仕事になるのなら日本出張に行ってもらいます。ほかの国も同様です。
日本本社とは雇用体系が違いますが、中国人スタッフの価値観に合うように、誰もが納得する歩合や能力給を取り入れています。4~5年前から営業職には、毎月の成績に応じた能力給を支給しています。
もちろん対価が減ることもある厳しい制度ですが、積極的に取り入れた結果、営業成績は格段にアップしました。こうした改善は、頻繁に社員アンケートをとることによって決めていきます。食堂のメニューもアンケートで決めています。
また、中国人スタッフは意欲が高いので、働く場はもちろんのこと、日本語の学習や技術研修などの機会を作っていくことが会社の役割だと考えています。
●私が会社を好きな理由 営業部秦志全氏(入社8年)
福利厚生がしっかりしていて職場環境がいいことはもちろんですが、いろいろなチャンスを与えてくれるのが魅力です。まず、大学では英語と日本語を学んだので、語学力を活かせるのが嬉しいです。そして、今後会社が海外展開をしていく中で、国を超えた懸け橋となっていける夢があります。来年は海外事業で新たなキャリアが築けると思います。今は、土谷の夢が私の夢なんです。
FNA会員企業に聞く 「アットホームが発展の鍵」
深圳市五鑫科技有限公司
深圳市五鑫科技有限公司は、2005年に中国人技術者が理想のものづくりを目指して設立した精密樹脂金型の会社。同社の中国人スタッフは、口をそろえて「アットホームな会社だからずっと働きたい」と語る。日系企業で働いた経験をもとに、中国に合った社員教育と工場経営を行っている総経理 汪強氏に、中国人スタッフに愛される職場づくりの秘訣を聞いた。
TEL: 0755-8176-5688 http://www.moldtooling.net/
●定着率を向上させる仕組み
会社の方針に納得し、主体性をもって働いてもらうためには、経営情報の透明化と責任の明確化が大前提になると思います。
そこで当社では、経営情報をすべて公開し、各部門に独立採算制を採用、会社の利益と個人の利益を連動させることで、会社との一体感を持たせています。
会社が儲かれば自分の給料が上がり、儲からなければ給料が下がることを実感してもらうために、社員には「独立・自由・責任」を与えたうえで、業績の結果を毎月の給料に反映させています。
●疑問を持たれない仕組み
具体的には、社員が希望すれば技術、管理、語学等の教育受講費用も会社が負担し、社員1人ひとりのスキルアップを助け、共に成長できる仕組みを整えています。頑張っても、頑張らなくても給料が同じであれば、社員は成長意欲をなくしてしまいます。しかし一方で、社内の鉛筆1本まで、自社開発のERPシステムを駆使し管理しています。
このように、収入と支出(コスト)を瞬時に把握できる体制を整えているからこそ、利益をしっかり把握できます。また、社員に対しここまでの情報を公開するからこそ、信頼関係が生まれると思います。
つまり信頼とは一方通行のものではなくて、お互いに育むものなのです。ですから、社員には、「儲かっているはずなのに給料が少ない。会社はどこにお金を使っているんだ」といった経営に対する疑念を持たせないようにしています。
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●品質の向上のために
当社は、技術の蓄積をとても重視しています。製造業において品質にばらつきや差が出てしまうのは、人が辞めていくからです。職人技が求められる現場の仕事では、人が辞めれば技術の蓄積はなくなってしまいます。ある程度は組織として解決できますが、基本は、会社の成長=個人の成長=品質の向上です。
こうした話し合いを社員と行い、かつ会社の仕組みを整える努力をし、それをすべて社員に公開してきたからだと思いますが、スタッフの定着率は非常に高いです。現在の従業員は70名ですが、幹部の80%は2005年の創業当時からのメンバーです。
また当社の特長として、社員70名中に夫婦が13組26名(約40%)もいます。夫婦で働き、個人の成長と家族の将来、そして会社の未来を一体に考えることができる環境だということも、技術力を支え、品質の向上に繋がっていると考えています。

FNA会員企業に聞く「 創造力あふれる環境づくり」
常州鴎琵凱搬運機械有限公司
常州鴎琵凱搬運機械有限公司は、油圧ポンプをベースにしたハンドリフトで日本国内シェア№1の株式会社をくだ屋技研が常州市に設立した独資工場。現在、上海と広州に営業支店をもち、顧客のニーズをくみ取ることから中国の現場に合った商品開発を進めており、12月の「ものづくり商談会@深セン」にも出展を予定している。今回は、総経理 市原浩一氏に創造力あふれる職場環境づくりの秘訣を聞いた。
TEL: 0519-8511-9208 http://www.czopk.com
●刺激的な現場を楽しむ
中国人技術者は、日本では考えられないような発想をするので、毎日刺激をもらっています。日本では自動化というとロボットに任せますが、中国ではいかに効率よく速く作るかを考えるので、ロボットに個人の発想をプラスし工夫していきます。
中国はマニュアルが確立されておらず、いい悪いは意見がわかれるところですが、私はここにものづくりの原点があると思います。ですから、日本の考え方を押し付けるのではなく、技術者が考えることに日本のアドバイスを加えていくという方法をとっています。
現在、中国に住む駐在員は自分1人ですから、基本的には中国人スタッフのやり方にこちらが合わせています。夜、上海の女性社員たちから「総経理もいまから飲みにおいでよ!」と電話をもらえるくらいには、仲間に入れてもらっていると思います(笑)。
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●現地化はここからスタート
日本本社との関係の作り方としては、治具ひとつとっても、日本から送られてきたものが、そのまま中国の現場に合うとは限りません。でも「使えないよ」では関係が悪くなってしまいますから、相互に行き来して相手を理解することが必要になります。
先日は、日本本社に行った中国人スタッフから、逆に日本のよさを教えてもらいました。中にいると当たり前で見えなくなっていることを再確認させてもらったり、中国人スタッフの目線から中国の現場に「日本はこうやっている」とフィードバックしてもらうのは、ものづくりの現場にとても重要な交流だと思います。
現在、常州工場の溶接作業は女性が行っていますが、日本本社からも絶賛されるほどの品質に仕上がっています。日本にはない文化でも、いい結果が出るものなら積極的に取り入れるようにしています。
来年日本本社は創立60周年を迎えます。日本、マレーシア、中国のスタッフが集まり、何かひとつ節目であり今後の原点になるようなことを一緒にやろうと企画しています。
●私が会社を好きな理由 営業部 陶駿氏(入社2年)
ライバルは中国企業ですから、価格だけを比べられると厳しいものがあります。それを乗り越えるには、やはり中国の現場に即した発想と確かな品質、日系企業ならではの丁寧な応対が重要だと実感しています。
私たちの商品は、工場や物流などさまざまな場面で活躍できるものなので、中国展開の前途にもたいへん希望がもてます。日本のシェアナンバー1のプライドをもって頑張っていきたいと思います。
FNA会員企業に聞く 「風通しのいい環境づくり」
大電塑料(上海)有限公司
大電塑料(上海)有限公司は、医療、家電居民用、産業、自動車などに利用されるポリ塩化ビニール(PVC)のほか、無ハロゲン製品、ABS着色材料等を生産している。日本の福岡にある大電株式会社の現地法人で、日系企業としては早く1993年に江西省に進出。その後江蘇省へ移転、そして2001年には上海に工場を構えるに至った。長い経歴をもつ同社董事 副総経理の平田隆一氏に、風通しのいい職場環境づくりの秘訣を聞いた。
TEL: 021-6775-6052 http://www.daiden.com.cn
●実情にあった管理を
中国人スタッフの休暇理由でよく見かけるのが「家族が病院に行くので付き添う」というものです。日本ではよほどの場合に限られるので不思議に思い、ある日部下が家族の通院に付き添う際について行きました。なんと集合は午前3時。冬の寒い中、病院前で並び、開院とともに走って会計にまた並びました。ようやくあとは診療だけとなっても順番がくる前に診療時間が終了したら、翌日また並ぶところからやり直しです。家族の助けが必要な理由がよくわかりました。そこで、こうした休暇申請は認可することにしています。
中国人は家族や個人を大切にし、自分のために生きる姿勢が明確で、またそれを堂々と主張できる環境です。そのため、スタッフ系の従業員にはフレックスや時差出勤も利用できるようにしています。もちろん工場には適用していませんが。
●一番信頼しているから管理職
当社の資本は日本の親会社から出ていますが、中国の会社として体制を整備していかないと社会に貢献できないと考えています。欧米企業を見習って中国人を管理職に登用していかないと優秀な人材を確保できません。そのため中国人も受け入れられるような管理方法を取り入れるようにしています。
当社では、日本の親会社で使用している「目標管理シート」を使い、個人の目標達成度に応じて、ボーナスや昇給に反映させています。一番難しいのは、できただけでは評価は「ゼロ」であり、加えて何かができて初めてプラス評価だと理解してもらうことです。また、中国人の場合は熱意も評価していく必要があります。
管理職に対しては、常に「一番信頼しているから管理職を任せている」と言っていますし、一般の従業員にも期待を言葉として伝えるようにしています。こちらの期待値が一番伝わるのは、やはり日本出張に連れて行くことでしょう。
中国では、機会は平等に与え、結果を出した人を幹部として厚く待遇していくかたちにしたほうが納得してくれます。
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●私が会社を好きな理由 営業部 謝文輝氏(入社10年)
とてもアットホームな会社で、社員同士、家族のことまで含めた気遣いがあるので安心して働けます。
また、当社の商品は、医療機関で使用するものが多く、生命にかかわる重要な仕事をしており、社会に貢献しているという自負心があります。そして何よりも、うちの副総経理は最高の上司だと思います!

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プロに聞く「 中国と日本、協業と分業の考え方」
日本の製造業が中国に本格進出してから約20年。日本人と中国人の協業のかたちは少しずつ変化を遂げ、現在、組織化や現地化において多くの日系企業が課題を抱えるようになってきている。そこでここでは、製造業の現場に即したコンサルティングを展開している蘇州プライム人材の高級顧問 飯高直人氏に、解決策のヒントを聞いてみた
●中国人、日本人、それぞれのよさ
多くの企業が抱える課題の1つに、中国人管理職の育成がある。中国人・日本人、ともに自社の大切な社員とはいっても、現実的には文化や価値観の違いばかりが目につくことも多い。飯高氏は逆にその違いを有効に活用することを提案する。「日本人は仕組みづくりのスキルが高い。一方、中国人は推進するスキルが高い。つまり、日本人が仕組みをつくって中国人がそれを実行し、中国の現場にあわせて日本人が仕組みを大局的な意味から修正していく方法が、もっとも現実的」。実は、一番多い失敗の例が、日本人が中国という仕組みの中で実行しようとし、空回りするケースだ。
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●日本人に求められる脱皮
特に、日本人としてここで考えなければならないのは「職人の概念」だという。日本的な「KKD(勘、経験、度胸)」は、日本の文化そのものであるため、中国にそのまま移植するのは難しい。したがって、ここで日本人も属人的なスキルをどのように中国に導入するかを工夫しなければならず、柔軟な発想が求められている。しかし、中国に来たばかりの日本人がどこまで中国にあった仕組みを考えることができるのか。これについて飯高氏は、「特に日本からの新規進出の場合なら、中国や中国人を知らないからこそ、かえって合理的な仕組みをつくれる可能性がある」と語る。どこまでもポジティブにチャレンジすることが重要だ。
●中国人に受け入れられる仕組みとは
日本人が勘違いしやすいもう1つのポイントは「仕組み」と「枠」は違うということだ。つまり「これをやってはいけない」というネガティブルールをつくるのではなく、業務や経営の流れを文化が違う中国人スタッフにもわかるように整理し、開示することこそが「仕組み」である。もし、仕組みをつくった日本人自身が、その仕組みの中で働いても働く意義を感じないようなら、そんな仕組みはうまく機能しないだろう。「日本では、お客様至上主義が浸透しているが、中国の場合には、まず社員を見て、その先に顧客を見ることが大切。つまり、言わなくてもわかるだろうという姿勢を捨て、また、ノウハウを盗まれるという考え方を捨てて、中国人と一緒にいいものをつくるという姿勢こそが、これからの製造業のあり方ではないか」と飯高氏は語る。
●圧倒的な技術力を持て
そうしていま、日本人に求められるのは、まず圧倒的な技術力だ。幹部候補となる中国人スタッフは、日本の文化にも理解があるために日中の板挟みになることが多い。
日本人は、彼らを「管理」するのではなくて、彼らを「主役」としていくために、日本の圧倒的な技術力を説得材料とし、方向性を修正し導いていく補佐役に徹するべきだろう。
また、幹部候補に日本研修を行う企業も増えているが、そこで重要なのは、日本の本社で新入社員が行うような雑用をさせるのではなく、同等の役職をもつ日本人と一緒に、将来を見据えた協業の場をつくることだ。
国籍がどこであっても、みなが同じ会社の社員で仲間だ。飯高氏によると「価値観の違いを認識したうえで目標を共有する姿勢が、日本人・中国人双方にとって今後ますます必要となり、それこそが企業成長の鍵だ」という。
●日本帰国前のチューニング
また中国で日本的な働き方と中国的な働き方を真剣に受け止め悩んだ人ほど、日本帰国後に戸惑うことも多い。今後世界最大規模の市場となる中国での駐在経験を、日本帰国後、どのように活かしていくのか。海外生活が長くなればなるほど、日本の現在とも距離ができてしまうのが現実だ。そのため、日本にチューニングするための研修ニーズは、現場レベルで年々高まりをみせている。
今回話を聞いた飯高氏が高級顧問を務める蘇州プライム人材有限公司では、今後帰国前研修にも力を入れていく予定だという。これは、中国で培った日本人の新しいスキルを埋もれさせず日本国内で循環させていくために、ますます必要となっていくものだろう。来春帰任が決まっている方は、ぜひこの研修を活用してみてはいかがだろうか。
蘇州プライム人材
蘇州人旺人力資源服務有限公司
蘇州本社: 蘇州市工業園区中銀恵龍大厦3105号
TEL:0512-6272-8355 www.ren-one.com
E-mail: info@ren-one.com( 植田・郭)
蘇州プライム人材
蘇州人旺人力資源服務有限公司
高級顧問: 飯高直人氏


![]() リード・エス上海力得思人才信息諮詢有限公司 人事諮詢部課長 宮内信太郎氏 |
![]() 日本人講師が中国語で行う研修。迫力が違う |
プロに聞く「 工場に適した人材教育の見つけ方」
国際競争力を高めるためには「現地化」が不可欠だが、多くの日系企業にとって一番の悩みは、権限を委譲したくてもなかなか人材がいないという点だ。リード・エスでは、人材コンサルティングの立場から、中国国内での人材教育研修にも力を入れている。中国人スタッフには出世の夢をもってもらい、企業も同時に成長していく。その道筋をつくる社員教育のいまを聞いてみた。
●高まる社員研修の必要性
「中国人はスキルアップに貪欲です。研修の参加者はみんな真剣で、日本のように時間が早く過ぎることを祈っているような雰囲気はありません。本当に驚きますよ」。そう語るのは、リード・エスの人事コンサルティング宮内氏だ。
最近は、中国人経営者から「日本の高度成長を支えた社員教育とはどんなものなのか。うちでもできるか」と聞かれることも増えたという。しかし現実問題として、現場で自発的に動け、潜在的な問題点に気がつくことができるようなスタッフに育てていくのは難しい。
いまもっともニーズが高いのは、現場の班長・組長クラスの研修だ。いわゆる叩き上げの人材が数年で就くポジションだが、この層の意識改革が工場の生産性に大きく関係し、離職率をも左右するため注目度も高い。
しかし、この研修は現場の経験がある人が講師にならないと期待する効果は上がらない。製造業における研修の難しさがここにある。
●会社のビジョンを中国語でダイレクトに
研修の講師は、研修を受ける側の立場に寄り添いつつ、創業者や総経理クラスの熱い思いを伝えられなければならない。誰であっても、自分が理解し納得していないことを教えることはできないからだ。
昨今中国系の人材教育会社も増えてはいるが、会社の経営理念を理解させるのは、その必要性をわかっている日本人講師のほうが得意だという。
リード・エスは製造業を理解した講師陣を揃えているが、なかでも看板講師は、中国歴26年、製造現場の経験も豊富なうえに、中国での総経理職の経験もある日本人だ。通訳を介することなく、堪能な中国語で行う研修は、リズム感と迫力があふれ、中国人スタッフの心に直接届く。
マネージャークラスや現場監督者クラスの研修を依頼した会社からも「会社が求めていることと、受講者の気持ちを融合させていくことが巧みだ」と評価も高い。次に、リード・エスが行っている研修の実例を見てみよう。
![]() 光栄電子工業(蘇州)有限公司 董事総経理 武内隆氏 |
![]() 「GUTS」大会の表彰状をもつチームメンバー |
社員研修コンサルティング 実例の紹介
●課題は次世代幹部の育成
通貨処理機の日本国内パイオニアとして知られるグローリーは、2003年に蘇州工場の操業を開始。以来9年にわたり、硬貨や紙幣などを正確に見分け、かつ高速に処理する技術で、中国事業も堅実に拡大・成長を続けている。
同工場は、幹部クラスの研修を毎年5回程度行うなど、長年、人材育成にも熱心に取り組んでおり、近年の課題は次世代の幹部の育成だという。規模の拡大に伴い、ラインリーダーや課長補佐クラスの研修が必要になったので、問題解決能力研修などを行ってきた。しかし、なかなか実務に結びつかない。これまでの研修を通し、スタッフも一般論は理解しているので、会社全体の方針を工場から部門にまで展開していくためのオリジナルの研修が必要とされた。
●蘇州工場のチームが最優秀賞を獲得
話は少し飛ぶが、グローリーグループでは毎年QCサークルのコンテスト「GUTS大会」を開催している。全社的な品質管理活動の一環として、仕事の質の管理や改善を継続的に行うための小グループを作り、課題を見つけ改善しその成果を競い合うもので、同社以外でもこの手法を取り入れている企業は多い。
リード・エスの講師は工場を見回った後、現場が抱える課題を指摘したうえで、その解決方法としてQCサークルの活動を軸とする研修内容を提案した。つまり、QCサークルのリーダーたちを変えていくことによって、課題となっていた次世代の幹部育成と現場の課題解決を一挙に行おうという提案だ。「現場を見てもらったときのアドバイスが的確で製造業の現場を熟知されている方だったから、ご提案のコンサルティング内容と講師をお願いすることにしました」と、武内総経理は語る。
今年、2012年の「GUTS大会」には、日本をはじめ海外からのチームが参加。蘇州工場のメンバーも日本に渡り発表を行い、なんと最優秀賞を獲得するにいたった。中国人スタッフの成長をみなが実感できた瞬間だった。「いずれ、現場はほとんど中国人スタッフに任せたいです」と、会社入口近くに貼られた顔写真入りの組織図を指さしながら、武内総経理はまだ何年もかかる人材育成に意欲を見せてくれた。
リード・エス
上海力得思人才信息諮詢有限公司
上海市天山路310号海益商務大厦8楼AB室
TEL: 021-3353-8700 www.lead-s-career.com.cn
E-mail: info-hrm@lead-s.com.cn
人事諮詢部課長 宮内信太郎氏


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プロに聞く「 優秀な若手技術者を採用したい」
中国向けの商品開発や技術サービスの開発が急がれる昨今、中国法人の位置づけを事業戦略拠点と見直す動きも加速している。中国向け商品の開発に際し、日本人技術者はもとより、中国人技術者の人材ニーズは高まる一方だ。そこで、製造業の人材サービスで長年のノウハウをもつメイテック上海の村上隆一氏に人材市場について聞いてみた。
●定着する中国人若手技術者とは
中国における日系製造業の将来は、中国人若手技術者にかかっていると言っても過言ではないだろう。しかし中国の若者は、すぐに辞めてしまうと言われる。
大卒全体で見て、新卒の入社半年の離職率は30%、重点大学の離職率でさえ20%という数字があるが、離職率を抑える方法は、やはりある。
メイテックが西安と成都で展開している独自の職業訓練校では、卒業生の離職率が入社半年で4%とかなり低い。その秘訣を村上氏に聞いたところ、「重要なのは、日系の会社では何を期待され、求められているかを知ってもらうこと」だという。
日本は言わなくてもわかる文化で、中国は言葉にし、形にすることでようやく振り向いてもらえる文化だ。日系企業の変革も必要ではあるが、若い中国人技術者本人に文化の違いを知ったうえで、キャリアアップの夢を持って入社してもらうことも重要だ。
●日本人の強みを生かして中国で勝負する人材とは
製造業では中国系企業の生み出す製品の質が向上し、コストダウン、リスク分散の観点からサプライチェーンの見直しが始まっている。新たにサプライチェーンの関係を構築する企業で必要とされるのが、生産管理や技術指導ができる日本人シニア職のノウハウだ。ハイエンド層のニーズが高いのは言うまでもないが、30~40代のミドル層であっても活躍の場は広い。
「高い専門性を持った方や、日系企業と中国系企業の幅広い橋渡しとして、生産・開発するものを考える力をもった日本人は、今後ますます必要。技術営業などのニーズも出てきている」と村上氏は語る。技術をつきつめるだけでなく、中国という土地でもっと幅広く将来を切り開いていく活力が求められている。
そして、年齢に関係なく求められるのが、日本とは全く違った中国という環境に順応する力だ。日本人だからというだけで通用した時代はすでに過去となり、日本語が話せる中国人も多くいる中国の中で、日本人としての経験の強みを活かす力が必要とされている。
![]() 製造業出身者による丁寧なキャリアカウンセリセンリグ |
![]() 職業訓練校の実践的トレーニング |
●中国でのエンプロイメンタビリティを強化することとは
年功序列ではない中国では、能力の差がそのまま給料の差となる。しかし村上氏によると、「中国人スタッフも給料だけを判断基準としているわけではない。他社に引き抜かれたり、人材が流動する場合、よく起きているのが当該社員に会社の期待が伝わっていないケース」だという。
つまり、明確なキャリアパスが見えることが重要だというのだ。たとえば、成績優秀者に対する日本での研修は、その社員に対する期待値を表す方法の1つだが、その次のステップも準備しなければならない。仕事内容と責任の範囲を全員に理解できる形にしてゆくこと。そして次に1人ひとりと話をして伝える力が重用だ。
日本の場合、全体に向けて発表するだけで周知徹底できる場合も、中国では、個人面談などを行って、しっかりと相手に伝えることが必要となる。
情報を開示することと、理解してもらえることは別だ。会社の期待値を社員と共有することが中国でエンプロイメンタビリティを強化する力となる。
●ギャップからチャレンジがうまれる
メイテックが製造業で働く人から頼りにされるのは、エンジニア出身のベテランがキャリアカウンセリングを行うからだ。現実は、100%満足できる職場も、完璧な社員もいない。
しかし、ミスマッチを回避し、企業も働く人も互いにギャップを認識したうえで、互いにチャレンジすることはできる。日本人技術者が初めて中国に来る場合、ていねいな面接でキャリアの棚卸をしてから、性格を含めた総合適性のもとに企業を紹介している。
西安と成都のスクールでは、四年制大学以上の理工系学生を対象に「日本語」「日本の企業文化」「ビジネスマナー」「実践技術」を教え、若くて優秀な技術系人材の育成を行っている。紹介した日系企業からは「日本人みたいですね」と評価が高く、信頼は厚い。
メイテック
明達科(上海)人材服務有限公司
上海市延安西路1118号龍之夢大厦2611室
TEL: 021-6247-0606 www.meitec.com.cn/
E-mail: news@meitec.com.cn
董事・総経理 村上 隆一氏


新しいインセンティブプログラムの提案
企業の法定外福利厚生をバックアップする株式会社ベネフィット・ワンの中国法人、貝那商務咨詢(上海)有限公司が、今年9月上海で開業した。今後、企業の社員がサービスを選べるポイント制インセンティブ制度や、企業間のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)サービスなど、企業と人、企業と企業の信頼関係を築くさまざまなソリューションを提供していく。そこで今回は、董事総経理の鈴木梢一郎氏に中国におけるインセンティブの考え方と同社のビジョンを聞いた。
1.中国と日本では、福利厚生の考え方にどのような違いがありますか?
中国では、端午節のちまきや中秋節の月餅といった現物支給や、春節の紅包といった習慣があります。また中国では、日本以上に家族との繋がりを大切にします。そのため、日系企業でも現物支給の習慣を取り入れている会社は多いです。当社のサービスでは、そこからさらに一歩進んで、各人が自由に利用したいサービスを選べる仕組みとして利用できます。今後、中国を拠点とする企業はますます国際化が進み、社員のニーズも多様化していくことが予想されるので、企業と社員それぞれが喜ぶ制度づくりの手伝いをしていきたいと考えています。
2.中国にも福利厚生のアウトソーシングを行っている会社はありますか?また貴社との違いはどこにありますか?
中国系の人材会社もさまざまな人事コンサルティングや福利厚生サービスを行っていますが、我々が調べた範囲では、全く同じ仕組みというものはありませんでした。なんといっても当社の特長は、人事評価制度の構築から、社員がベネフィットを享受できるところまでをワンストップで引き受けられる点にあると思います。
3.どのような交換商品がありますか?
現在は、訪日旅行プランをはじめとし、中国国内の高級ホテルの宿泊、レストラン優待券や映画券、また語学学校など、さまざまな商品があります。今後、みなさんのご希望を聞いて、中国人社員のみなさんが喜ぶ商品を取りそろえていく予定です。カスタマイズもできるので、ぜひお問い合わせください。
4.サービスは上海以外にある企業でも利用できますか?
現在は上海と上海近郊が中心ですが、今後は物品も充実させ、中国全土に配送できる仕組みにしていく予定です。具体的には家具、家電、日用品等です。こうした仕組みを早期に作ることで、全国対応が可能になると思います。そうすれば、都市部で働いている社員が田舎の家族へのプレゼントとして活用したりと、中国の習慣に合った発展をしていけると考えています。
報奨制度の充実と並行して必要になるのが、人事制度の見直しと職位の整備だが、ベネフィット・ワンでは人事制度の見直しから相談できるので、人事・労務に慣れていない人でも安心して相談できる。また、会員企業は会費を払って福利厚生サービスを「団購(グループ購買)」するのでお得でもあるし、中国人の人事担当者でも理解しやすいシステムだ。人事制度を刷新するときに、同社のサービスを検討してみてはいかがだろう。
「ベネフィット・ワン サービスの仕組み」
会員企業:システム利用料(一定の規模以上の会社は無料)及び毎月の社員利用分を請求。インセンティブ制度と連動させて、優秀社員にポイントを付与して運用。
従業員:会員企業の社員は獲得ポイントに応じて旅行・レストランなどサービスを利用。
貝那商務咨詢(上海)有限公司
上海市浦東新区陸家嘴環路1000号恒生銀行大厦15楼033室
Tel:021-6841-1000 E-mail: info@benefit-one.com.cn
Web:http://www.benefit-one.com.cn(日本語、中国語)
http: //www.benefit-one.co.jp(日本語のみ)
能力型賃金制度をどのように
導入したらいい?
日本では賛否両論がある能力型賃金制度だが、企業文化が欧米に近い中国では能力主義が一般的だ。そのため日系企業では、中国人スタッフとの価値観の相違や人材の流出に悩む企業が多い。
中国で組織づくりを始める際にまず必要とされるのは、職位と求める責任範囲、それに連動した給与テーブルを明確に定めること。次に重要とされるのは、1つ上の職位に上がるために必要とされるスキルの習得機会を全員に与えていくこと。特に製造業の場合では、個人として習得すべき技術をオープンにして、全員で競えるような環境をつくることが望ましい。
またこれと同時に、日本本社から派遣された社員には、その職位にふさわしい技術と能力が中国人スタッフから求められる。そして、中国での職位に則った決断を迫られた結果、日本本社との板挟みにあってしまう。
こうしたときには、中国系人材コンサルのプロに日本人同士では気が付かない客観的な意見を聞き、組織変革に利用するのも1つの方法である。
中智上海経済技術合作公司(略称「中智上海公司」)は1993年5月に設立。外資系企業の人事・労務・コンサルティングには、豊富な経験があり、お客様への日本語での対応もできる。
また、同社が属する中智グループは、中国中央政府が直轄管理する国有重点基幹企業であり、文化背景の違いによる解決策の提案だけでなく、法律の側面からのアドバイスもしてもらえる。
ホウレンソウを中国の現場に
浸透させるには
「外出がちで、中国人スタッフの業務進行状況をチェックできない」「自発的に報告するような習慣をつけるには、どのようにしたらいいのか」。コミュニケーションのスタイルが違う中国と日本で、ホウレンソウ(報連相)のルールをつくるのは難しいもの。
2012年夏、日本で4,000社の導入実績を誇るリスクモンスターグループのJ-MOTTOが、中国でもグループウェアサービスの提供を開始。このグループウェアは、J-MOTTOがこれまで12年の運用実績を基に、中国に進出している日本企業向けのグループウェアとして開発した新サービスだ。
主な機能では、スケジュール管理、施設予約、掲示板、ショートメール、タイムカードなど、業務の中で利用頻度が高く毎日の業務で必要とされる10の機能が標準で準備されている。
また、クラウドサービスを利用するので、ソフトのインストールやサーバーの管理等が一切不要な上に、中国ならではの機能として、日本語・中国語の切り替えが可能になっている。毎回ログイン時に、日本語または中国語の表示をクリックで簡単に切り替えられる仕組みだ。
そして、特に出張中に重宝するのが、スマートフォンでも利用可能な点だ。
中国は人間関係が密接なため、職場であっても「相手を見ている」ことが伝わるような行動が、日本よりも必要とされる。コミュニケーションを円滑にするための1つの方法として、グループウェアを活用してみてはいかがだろうか。
http://www.j-motto.com/cn/
健全なる労使関係の構築は企業人事戦略のカギ
日本の人材派遣のようなシステムが中国にもある。上海市国有資産委員会に所属している東浩グループ上海市対外服務有限公司(略称、上海外服)は長年にわたる中国人材市場の研究によって、人材派遣、人事代理、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)、人材募集、給与管理、福利管理、健康管理、医療保障、人材育成、労働組合組織の設立サービス、ビジネス・コンサルティングなどの全面的・効果的なワンストップ・サービスを提供しており、日本でいう人材派遣会社に比べて業務範囲が広い。
急速に変化している市場において、企業がよい人材を確保するために、上海外服はスタッフと企業間の労働関係を効率的に調整。直接的な労働争議を回避し、企業と従業員間のコミュニケーションの円滑にする手伝いも行う。
雇用関係の調整のほかに、良質なアウトソーシング・サービスも提供するほか、福利厚生のカスタマイズや豊富なオプションを企業に提供。社員は、手厚い福利サービスを享受できるとともに、企業の熱心さも実感できるため、企業の人事部門は、より重要なヒューマンリソース・マネジメントに注力することが可能となる仕組みだ。
上海外服は、創立してから28年間、常に中国人材事業のリーダーとしての自覚とともに進化しつつ、全国ワンストップ統合プラットフォームにおける専門的なヒューマンリソース解決提案を提供している。
現在、日系大手企業を含め、世界トップ500企業の85%が上海外服のサービスに加入。また、少人数の代理所、事務所及び中小企業に対しても、誠意あるサービスを提供している。
電話:021-6372-1888*1810(日本語可) E-mail: jinfo@efesco.com