2018.02 China_vol.37
「素形材」とは、素材に熱や力が加えられ、形が与えられた部品や部材のことであり、素材は、金属をはじめ木材、石材、窯材、ゴム、ガラス、プラスチック、ファインセラミックス、複合材料など多岐にわたる。加工方法は、銑鉄鋳物、非鉄鋳物、ダイカスト、鍛造、金属プレス、粉末冶金、熱処理、金型、鋳造鍛造機械などが該当する。
素形材は、製造業に携わっていても耳馴染みのない人がいるほど一般的な単語ではないが、歴史はそれなりに古い。財団法人綜合鋳物センターが財団法人素形材センターへ改称したのは、1984 年のことだ。
その素形材が、なぜいま注目されているのか。素形材は、民生用から産業用までさまざまな製品に使用されているが、精度を高めたり素材に機能性を与えたりすることで、自動車や自動化設備などのハイテク製品を支えている。それに強みを持つことは、日々競争が激化するものづくりの世界において、高い競争力を備えることになる。経済産業省も「素形材産業ビジョン」や「取引ガイドライン」を策定するなど、素形材産業の振興を積極的に後押ししている。
素形材センターによると、2014 年の日本の素形材産業の出荷額は約4 兆6000 万円。そのうちの約8割を鋳造品と金属プレス製品が占める。「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌と遂げた中国でも、素形材は欠かせない存在である。中国産業信息によると、鋳造製品の16 年の生産量は前年比3.51% 増の4720 万t だった。成長は鈍化しているものの、日本よりもはるかに生産量は多い。『2017-2022 年中国精密鋳造件市場分析予測及発展趨勢研究報告』によると、15 年の精密鋳造製品の生産量は220 万t で、市場規模は1100 億元(約1兆8700 万円)に達している。年が違うので単純には比較できないが、精密鋳造だけで日本の鋳造製品全体の規模に匹敵するほどなのだ。21 年には、精密鋳造品の生産量が460 万t、市場規模が2850 億元に達すると予測する。
鍛造については、中国産業信息によると、生産量は13 年の881 万5700t から翌年には1230 万6600t と、急激に伸びた。鋳造よりも成長率は高い。
金属プレスについては、特に自動車業界向けの生産量が多い。中国産業信息によると、15 年の生産量は4250 万t に達し、市場規模は6800 億元に及ぶ。好調だった自動車販売台数による影響だ。
データがそろっていないので、日中の単純な比較はできないが、中国の方が素形材の市場規模が大きいのは間違いない。「中国製造2025」により高付加価値製品の増産を目指す中国において、日系の素形材メーカーにはまだまだビジネスチャンスがありそうだ。本特集では、特に高付加価値の素形材に強みを持つ会員企業を紹介する。

【掲載企業一覧】
蘇州太富精密模具有限公司 Suzhou Veryrich Precision Tools Co., Ltd.
金華市德裕精密陶瓷科技有限公司 Jinhua dayoo advance ceramic Co., Ltd.
倉敷菱東金属制品制造(上海)有限公司 KRT Laser Co., Ltd.
上海日伸鋼鉄制品有限公司 SHANGHAI NISHIN STEELWARE. CO,. LTD.
星本機電配件(上海)有限公司 Hoshimoto Co., Ltd.
肇慶市高元電子有限公司 TAKAGEN ELECTRONIS (Z.Q.) CO., LTD.
忠嗣金属制作(上海)有限公司 TADATUGU METAL MANUFACTURING (SHANGHAI) CO., LTD.
上海佐錦精密機械有限公司 Shanghai Zuojin Precision Machinery Co., Ltd.
実亮智能科技発展(上海)有限公司 SHILIANG INTELLIGENT TECHNOLOGY DEVELOPMENT(SHANGHAI)CO., LTD.
遠方からも頼られる難加工に対する解決能力
加工材料:鉄 ステンレス 銅 真鍮 アルミ 純ニッケル
加工方法:金型 プレス加工
蘇州太富精密模具有限公司 Suzhou Veryrich Precision Tools Co., Ltd.
FNA会員番号:2554
住所:江蘇省太倉市城区工業園金建工業苑6号
TEL: 0512-5311-6881 担当者:砂田学、王芳
ユーザー:通信機器、電子部品、映像音響機器、家電製品、電灯製品、家具、農機具、工作機械、ガス機器など
主要設備:プレス機械:アマダ 5 台(25 〜 45t) SEYI(80t) ワイヤー放
電加工機:三菱電機 精密汎用放電加工機:日本放電技術 NC
フライス盤:山崎技研 精密平面研削盤:岡本工作機械製作所
タッピングマシン:ブラザー工業5台 投影機:ミツトヨ
2003年より江蘇省太倉市にて操業開始して、金型の製作から精密プレス加工までを行っている。得意としているのは精密プレスで、製品板厚が0.1mmといった薄板への対応を可能とする。加工が難しい弾力性のある板ばねや硬質素材も難なく加工でき、部品調達に頭を悩ます顧客にとって頼もしい存在だ。広東省の家具メーカーもそんな1社。板材をテーパー状に円筒加工したリングを調達するにあたって、近隣では満足できる業者が見つからなかった。特にステンレスは、必要な角度まで曲げても圧力を除くと反力によってはねかえってしまう「スプリングバック」の性質があるため、真円を保つのは極めて難しい。そこで依頼した蘇州太富がその加工をやってのけた。技術力が顧客の課題を解決する。 | ![]() |
機能性に優れる特殊精密セラミック加工のスペシャリスト
加工材料:セラミック
加工方法:プレス加工
金華市德裕精密陶瓷科技有限公司 Jinhua dayoo advance ceramic Co., Ltd.
FNA会員番号:62285
住所:浙江省金華市金東区東孝街道康済北街1378号10#16#楼
TEL:0579-8277-1257 担当者:呂暁霞
ユーザー:電力、電子、鉱山、機械、化学、紡績、医薬、通信、医用生体工学、通信工学、宇宙、軍事工業
主要設備:ドライプレス、静水圧プレス、実験炉、平板窯炉、マシニングセンタ、平面研削盤、万能研削盤、無心研削盤、精度0.5μm の投影機、3次元顕微鏡、金属顕微鏡、硬度計、密度計など
特殊精密セラミックの構造部品と機能部品の設計、製造、加工、販売までを行う。アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素などの各種特殊セラミック製品と構造部品を製造。精度は2μm以内に制御し、パッキンリング、基板、スライドレール、スクイズロールなどを生産している。得意としている窒化珪素セラミックスの精密部品は、高強度で耐摩耗性と潤滑性に優れ、摩擦係数が小さいのが特徴。1000度の高温から冷水に投下しても強度が劣化しないので亀裂が入ることがなく、耐薬品性にも優れる。研究開発にも注力しており、レーザー装置のセラミック部品に使用される、40wのハイパワーのレーザーに耐えうるセラミックプレートの研究を進めているが、好評で徐々に受注は増えている。 | ![]() |
30年以上のノウハウが可能とする複雑形状の板金部品
加工材料:鉄 ステンレス アルミ
加工方法:レーザー加工 タレパン加工 曲げ加工 溶接加工
倉敷菱東金属制品制造(上海)有限公司 KRT Laser Co., Ltd.
FNA会員番号:3826
住所:上海市松江区中山街道文翔路142号9幢
TEL:021-5778-4660 担当者:齊藤優
ユーザー:医療、通信、半導体、食品、電子、自動化設備など板金部品が必要なあらゆる業界
主要設備:レーザー加工機(三菱電機3台、TRUMPF 1台)、タレパン加工機(muratec 1台)、レーザー・タレパン複合機(TRUMPF1台)、プレスブレーキ(MERUGA 3台、東洋工機2台)、溶接ロボット(安川電機2台、DAIHEN 2台)、2D レーザー測定器(VIRTEK 1台)、3D アーム型測定機器(FARO 1台)など
本社「倉敷レーザー株式会社」は岡山県倉敷市にあり、2006年に上海に進出。レーザー加工、曲げ加工、溶接加工まで一貫して受注可能な体制を完備し、アフターサービスと技術コンサルティングも充実。中でもステンレス部品の精密板金加工は、日本で培った30年以上のノウハウにより複雑な形状の板金部品も製作可能で、多品種小ロット・短納期にも対応する。CADデータを使用した独自の見積システムとデータベース化されたシステムにより、信頼される生産・納期管理と価格体系を実現している。今後も品質を重視したものづくりを目指し、各業界のユーザーに満足してもらえる製品を提供していく。 | ![]() |
厳格な検査を徹底した国内調達でコスト削減に貢献
加工材料:アルミ 銅 ステンレスなど
加工方法:鍛造 金型 プレス加工
上海日伸鋼鉄制品有限公司 SHANGHAI NISHIN STEELWARE. CO,. LTD.
FNA会員番号:61157
住所:上海市奉賢区南橋鎮金海公路6028号
TEL:021-5134-3888 担当者:倪勇倩
主要製品:業務用冷蔵庫・エアコンの熱交換器、自動車のパワーウィンドウ・サンルーフのモーター系部品など
主要設備:NC 旋盤、フィンプレス機、膨張機、ベンダー、アキュムレーター、溶接機、投影機など
商社として2000年に設立。購入した部品をそのまま販売するのではなく、商社の枠を超え、原材料調達から加工、表面処理、検査までを自社で完結し、顧客提供のサンプルを基にした来様加工や非標準部品のカスタマイズを行っている。高精度なアルミ加工を実現。顧客はすべて日系企業で、特に熱交換器を得意としている。顧客から指定された部品は一部日本から輸入しているものの、原材料は基本的に中国国内で調達。厳格な検査により、顧客が指定した品質を維持しながらコスト削減に努めている。アルミニウム管の継ぎ目には銅を採用することで溶接しやすくし、顧客の作業効率向上までを考慮している。また、製品に合わせて加工設備、検査機器や梱包の方法も自社で独自に設計、開発し顧客からの要望に応えており、多品種小ロットにも柔軟に対応する。 | ![]() |
多様な加工方法を組み合わせ産業用ハンドル・蝶番を製造
加工材料:鉄 ステンレス 銅 真鍮 亜鉛合金
加工方法:切削 鋳造 鍛造 金型 プレス加工
星本機電配件(上海)有限公司 Hoshimoto Co., Ltd.
FNA会員番号:13788
住所:上海市奉賢区鄔橋鎮葉張路89号
TEL:021-5740-7335 担当者:星本賢治
主要製品:配電盤・分電盤・制御盤などの産業用ハンドル、蝶番
主要設備:プレス機:アマダ NC 旋盤:シチズンマシナリー マシニングセンタ:ヤマザキマザック ダイカストマシン:ヒシヌママシナリー 転造機:ニッセー フライス盤:小久保鉄工所など
ホシモト(大阪市生野区)の現地法人で、配電盤・分電盤・制御盤などの産業用ハンドル、蝶番などを製造販売している。ハンドルも蝶番も見た目は小さいが部品点数は少なくなく、さまざまな技術が詰まっている。プレス、切削、鋳造と部品の加工方法は多岐にわたり、そのための設備を充実させている。素材についても、耐食性の重視など顧客の用途に合わせた提案をする。多品種小ロットにも対応するほか、標準品だけでなく顧客の要望に合わせたOEM(相手先ブランドによる生産)供給も行う。また、単品の加工品だけではなく、亜鉛ダイカスト品とプレス品との組立完成品での提供も可能だ。「不良品をひとつでも流出させたらダメ」(星本賢治総経理)という考えのもと、工程ごとの検査を徹底して日本品質の維持に尽力している。 | ![]() |
日本の3大自動車メーカーや華為も認める技術力
加工材料:金属
加工方法:金型 プレス加工
肇慶市高元電子有限公司 TAKAGEN ELECTRONIS (Z.Q.) CO., LTD.
FNA会員番号:55461
住所:广東省肇慶市端州大道大冲広場南側
TEL:0758-272-1888 担当者:高山清志
主要製品:車載部品:日本の3大自動車メーカー。カメラ部品:タムロン。モーター部品:日本電産。その他:華強、華為など
主要設備:順送自動プレス機40 台:山田ドビー ワイヤカット放電加工機5 台:三菱電機 研磨機12 台:岡本工作機械製作所 全自動洗浄機2 台:クリンビー 投影機6 台:ニコン 顕微鏡3 台:ニコン 非接触レザー測定機1 台:ユニオン光学 荷重測定機4 台:アイコーエンジニアリング
プレス加工一筋に50年以上の歴史を持つ山元(埼玉県越谷市)の現地法人で、精密小物金属プレス部品の製造・販売およびプレス金型の設計・製作、クリックドームやプッシュナットといった規格品の生産・販売、板ばねの開発・設計・製作・販売を行っている。特に得意としている薄箔振動板は、厚み0.03~0.05mmの金属箔をオイルレスで加工。金型の上下のクリアランスを1μmに保ち、平面度を0.01mm以下に制御する。TS16949とISO14000の認証を取得済みで、自動車業界の顧客も多い。今後も「薄箔」「精密」「板ばね」に注力し、業界のトップメーカーを目指したいとしている。 | ![]() |
トータルコストを低減する薄板TIG 溶接技術
加工材料:金属
加工方法:金型 プレス加工
忠嗣金属制作(上海)有限公司 TADATUGU METAL MANUFACTURING (SHANGHAI) CO., LTD.
FNA会員番号:15696
住所:上海市宝山区業績路297号
TEL:021-3633-3363 担当者:岩坂賀央
ユーザー:食品関係の自動化設備ライン部品、包装機部品、医療機器部品、工作機械関係部品、半導体製造関係部品、多種電池製造ライン部品など
主要設備:CO2 レーザーマシン:アマダ1台 タレットパンチプレス:アマダ( 20t) 1 台 サイクルローダー:アマダ1台 ベンディングマシン:アマダ1 台ほか5 台 スポット溶接機:パナソニックほか3台 CO2 溶接機:パナソニック10 台 Ar 溶接機:パナソニック10 台 自動バリ取り機:1 台 自動タッピングマシン:アマダ1 台 タッピングマシン:7 台など
大栄製作所(京都府京都市)の現地法人で、板金加工を中心とした金属製品の製造・販売を行っている。特に強みとしている薄板TIG溶接技術は、板厚0.5~2.0mm程度のステンレス鋼材を使用した変形を最小限に抑える技術で、作業者の経験と蓄積されたノウハウによる効率的な溶接。後工程の負担を少なくすることによる、トータルコストの低減効果がある。品質保証はISO9001の規格に沿って、不良発生時の原因究明と再発防止を行っている。問題発生時や問題発生が懸念される要因があれば即対応し、問題の引き延ばしをしない。不良の件数や傾向の統計を用い、安定した品質を目指している。 | ![]() |
加工技術を向上させ、高効率・高品質・低原価により昇降機・FA業界に貢献
加工材料:鋳鉄、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム合金等の金属材料
加工方法:切削加工(マシニングセンター、NC旋盤)
上海佐錦精密機械有限公司 Shanghai Zuojin Precision Machinery Co., Ltd.
FNA会員番号:58965
住所:上海市松江区大港鎮港興路466号1号
TEL:021-5785-4055 担当者:黄海生
ユーザー:昇降機、自動化等の業界
主要設備:横型マシニングセンター(日本OKK、米国HAAS、韓国斗山)、縦型マシニングセンター、立旋盤、NC旋盤、三次元測定器等。
鋳鉄、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム合金等の金属材料の精密加工を取り扱う。製品の約90%が昇降機業界で用いられ、主に三菱昇降機へ、巻上機、減速機、ブレーキ等の関連部品約200種以上を提供している。一般的な鋳鉄等の原材料は基本的に国内で調達するが、特別な安全部品に用いられる球状黒鉛鋳鉄(QT800)等は日本から輸入しており、材料は高い強度と硬度、耐衝撃性の特長を具え、加工の難易度が比較的高い。生産現場では製品の種類毎に加工目標を設定し、加工技術を絶えず向上させ、かつ高性能の工具の導入を惜しみなく強化して、加工時間と設備停止時間を短縮できるようにし、寸法公差や幾何公差に関する顧客の要求を満たすよう保証している。現在、昇降機業界の需要の成長は穏やかで、佐錦は自動化分野への参入に目を向けており、すでに三菱の自動化工場の合格供給業者資格を取得済みで、サンプル試験と見積を展開中である。これ以外に、治工具の設計や制作等のサービスも提供することができる。原材料価格、人件費および環境保護コストが上昇し続けている今、佐錦は自動化を通じて加工効率を高め、顧客のために原価低減に尽力し、品質の安定した製品を提供する。 | ![]() |
ハイエンドの精密板金部品を提供し、軌道交通AFCスマート設備の設計・加工が得意
加工材料:金属
加工方法:板金加工(レーザー切削、NCパンチプレス、NCベンダー、溶接)
実亮智能科技発展(上海)有限公司 SHILIANG INTELLIGENT TECHNOLOGY DEVELOPMENT(SHANGHAI)CO., LTD.
FNA会員番号:11156
住所:上海市松江区新橋鎮新茸路155弄51号
TEL:021-5768-7159 担当者:应明
ユーザー:軌道交通設備、液晶半導体、食品機械、医療器械、検査測定設備
主要設備:レーザー切削機(三菱)、NCパンチプレス加工機( AMADA 等)、NCベンダー加工機(AMADA等)、溶接機、吹付塗装専用室、フィルムボンディング加工機等
実亮は15年の精密板金加工経験を有し、日本から輸入したNC板金加工設備および付属の溶接・機械加工設備を具え、主な加工材料には、アルミニウム合金5052、冷間圧延鋼板SPCC、ステンレス鋼SUS304、ステンレス鋼SUS430等がある。製品は、半導体、ハイエンド産業検査測定、食品加工、医療器械、軌道交通AFCおよび金融等の設備に関連する。長期にわたり、日系・欧米系企業へ精度や外観の要求の高い精密板金部品を提供しており、顧客にはカールツァイス(検査設備)、モリタ(医療器械)、オムロン(自動化)等の有名企業が含まれる。近年の主力商品である軌道交通自動改札機モジュールは、20項目近い意匠・実用新案の特許を取得しており、中国および日本の高速鉄道や地下鉄で用いられている。同社はスマート駆動設備の研究開発・組立・生産・検査等のトータルな体系を完備し、顧客の要望に応じて小ロットのさまざまな品種のニーズに応えることができる。またISO9001認証を取得し、3つの検査室を備えており、原材料に対し厳格な検査を行い、定期的に設備の校正を実施して、上質の製品による社会への貢献を守り続けている。 | ![]() |
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素形材をつくるためには、素材の品質も重要だ。かつての中国では、寸法が正しくなかったり歪みがあったりすることが多く、品質の安定した原材料を調達することは難しかった。今回取材したいくつかの日系企業も進出当初は原材料の調達に苦労し、日本からの輸入に頼ることも少なくなかったという。それがいまでは、ほとんどの原材料を中国国内でまかなえるようになった。それだけ“ メイド・イン・チャイナ” の品質が向上したということだ。 それは加工業者とて例外ではない。ここ十数年で、多くの日系大手メーカーが中国企業から部品を調達するようになった。「素形材」は日本発の概念ではあるが、日本だけの“ 専売特許” でなくなっているのは間違いない。 日系のサプライヤが、いくら原材料の調達先を国内に切り替えたり自動化を取り入れたりして製造単価を下げようと、中国企業にコスト競争力ではかなわない。対抗するには品質で勝負するしかなく、星本機電配件(上海)有限公司の星本賢治総経理がいうように「不良品をひとつでも流出させない」覚悟が必要である。 2017 年は、日本の製造業では偽装事件など不祥事が頻発した1年だった。世界に名だたる大手企業でもああいった事件が起こりうるのである。中小の素形材メーカーはいまこそ、愚直にものづくりに取り組むべき時である。日本のものづくりへの信頼を取り戻すのは、中小企業のがんばりにかかっているといっても過言ではない。 |