粉末冶金専門の金型メーカー 主戦場は精度要求の厳しい自動車部品業界

東莞市騰星精密模具有限公司
会員番号:60289
所在地:广东省东莞市大朗镇蔡边村富华南路393号
電話:0769-8301-8186(陳衛星)

 

東莞市騰星精密模具有限公司  昨年9月に創業10周年を迎えた「東莞市騰星精密模具有限公司」は、2台の機械と2名の従業員からはじまった。日系企業を中心に、外資系企業をターゲットに金型や治具を販売。徐々に事業を拡大させ、中国でのものづくりをサポートしてきた。

ギアなどエンジン関係部品の金型に強み

 

   東莞市騰星精密模具有限公司は金型メーカーだが、粉末冶金に特化しているところが珍しい。

   粉末冶金は、粉末を固めて焼くというシンプルな工程ゆえに、大量生産に適している。それに材料歩留まりもよく、コスト面でも優れている。そうした特性から、自動車産業での活用が多く「粉末冶金による部品は、クルマ1台あたりで約16kgに達する」(陳衛星総経理)ほどだ。騰星が製造する金型は、家電や電動工具といった分野にも供給しているが、圧倒的に大きなボリュームを占めるのは自動車で、全生産量の7割を占める。ギア用の金型に強みを持ち、トランスミッションやバルブシートなど、エンジン周りを手がけるサプライヤへの供給が多い。


   自動車業界ではとくに厳しい精度を求められる。同社のこの10年間は、自動車業界に鍛えられたといっても過言ではない。「同じ単価でも精度要求は年々厳しくなっている」と指摘する陳氏。それは、中国のものづくりそのものが変化してきている証 しでもある。陳氏がその変化に対応してきたからこそ、同社のいまがあるのだ。いまでは、1µmまでの制御が可能となっている。

 


長期的な付き合いになることの多い日系企業の顧客

  創業当初、顧客は3社のみだったが、陳氏は、顧客の要望に応えられる自信があった。陳氏は起業する前、台湾地区の同業大手企業に6年間在籍。管理者として、150名が働く現場のマネジメントをしていた。その経験からすると、2名を管理することはわけもなかった。

  広東省には、日本人の経営者や工場長でも中国滞在歴の長いひとが多く、とくに東莞のような郊外では、中国語が流暢なひとも少なくない。陳氏は日本語を話せないが、起業前からそうした日本人経営者と交流があった。創業すると彼らから認められ、顧客を紹介してもらうことで徐々に受注を増やしていったのだった。そうしていまでは、50名以上の従業員を抱えるまでに会社は成長した。

   そうした経緯もあり、顧客の多くが日系企業で、全体の8割を占める。残りの2割は欧米企業だ。「日系企業は、取引先と自分たちとがお互いうまくいくことを願うウィン・ウィン関係を志向する」(陳氏)ので、長い付き合いになることが多いという。




   日系企業は要求が細かく厳しいが、「価格がある程度高ければ当然のこと」(同)と苦にしない。製作期間は、通常であれば一週間と短く、納期厳守を徹底していることが日系企業から信頼を得られる一因にもなっている。重要なのは、「いかに顧客の要望に応えられるかだ」と陳氏は強調する。騰星では非標準の金型も手がけるし、設計者を2名擁しているので、設計からの対応も可能だ。

昆山を拠点に華東地区での展開を計画

   大量生産をする自動車産業では、金型の素材は硬質なものを求めれることが多い。よく使用されるのはタングステン鋼だ。一般的な鋼材が20万ショットなのに対し、タングステン鋼は100万ショットまで可能だという。ただそれだけ材質が硬いと、高い精度で加工するには時間と技術を要する。ところが納期は待ってくれない。そうなると、加工設備に求めるスペックは自然と高くなる。

東莞市騰星精密模具有限公司


   騰星では、最新鋭の機械を揃えている。放電加工機(EDM)は牧野フライス製作所だし、ワイヤーカット放電加工機はスイス・GF マシニングソリューションズ、マシニングセンタも同社製だ。欧州企業は欧州製の設備を指定してくるケースが多いため、加工機械は欧州メーカーのものが多くなっているという。高い精度を保つためには、品質管理も不可欠だ。三次元測定機や真円度測定機などの計測機器は、ほとんどがミツトヨだ。

   陳氏は品質向上と顧客ニーズに応えるため、設備投資を惜しまない。最近では螺旋状に加工する依頼があるため、専用の設備を購入する予定だという。

   その姿勢は創業時から変わらないが、その意欲は、顧客からも評価されている。事業が軌道に乗る前には、日本人経営者から設備購入資金の貸与の申し出もあったという。それだけ陳氏が厚い信頼を得ているという証しでもある。

   自社工場にはまだかなりのスペース的余裕があるが、あくまでも金型にこだわり、成形には手を出さない。自動車部品は生産量が多いうえに、価格競争が激しいからだ。陳氏は、大手部品メーカーが倒れていく姿を東莞で目にしている。その厳しい価格競争に身を投じる気はない。


   陳氏が考える次の展開は、エリアの拡大だ。同社は現在、華東地区での展開を視野に入れている。その拠点となるのは、江蘇省昆山市だ。当地の欧米企業4、5社と商談中で、アフターフォローのためにも当地に製造拠点が必要となっているからだ。すでに物件探しを開始しており、年内には開業させたいとしている。

東莞市騰星精密模具有限公司

人材と設備を同時に アップグレード

 

   企業がさらに拡大していくには、人材の活躍も欠かせない。陳氏は、人材教育に力を入れている。定期的に会議を開き、工員に注意点を指摘し、業務の改善を促している。たとえば不良品を出したら、それにはどれだけのコストと時間を費やしているのかを検証。不良品を出さない方法を取ることで、どれだけの無駄を削減できるかをシミュレーションし、改善へとつなげているのだ。

   騰星ではこれまであまり採用を重視してこなかったが、これからは、「少なくとも専門学校卒の人間を採用する」(陳氏)予定だという。「どうしたらより効率よく生産でき、いいものができるかを自分の頭で考えられるような人間がほしい」(同)という希望があるからであり、「人材と設備を同時にアップグレードすることが今後のためにも重要」と陳氏は強調する。

   次の10年に向け歩みを進める騰星。そうした進化を追い求める姿勢が、外部環境の変化への対応を可能とするのだ。