NSL Industry Co.,Ltd.
真鍮素材・部品の製造販売

日本水準の高品質に引き合い


将来はアルミ事業も視野


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    エアコンや自動車などの内蔵部品に使用される真鍮(黄銅)製バルブ。産業の集積するタイで、主に日系製造企業に向けてこれらバルブ製品を納入するタイの専業メーカーがある。1964年設立のNSL Industry Co.,Ltd.。ローカル企業と侮ってはいけない。製品の品質はタイトップクラス。日本国内にある同業にも決して引けを取らない高い技術。引き合いは遠く海外にまで及んでいる。日本の住宅向け資材などとしても活躍するNSL社の製品群。その製造の現場を訪ねた。。

■素材生産から部品加工まで


    バンコクから西に車で1時間あまり。サムットサコーン工業団地の中に工場群はあった。敷地面積は3万6,000坪(約12万㎡)。赤い屋根のメイン工場と事務棟兼工場に続き、3拠点目の新工場用地の造成が急ピッチで進められている。「造成が終われば工場棟の建設が始まります。顧客のどんな要望にも応えられるのが当社の強みですよ」とManaging Directorのステープ・ジャトゥポンパックディー氏は笑顔で話す。ピーンと伸びた背筋にジーンズ姿。年齢を感じさせない若々しさが、会社の勢いと重なって見える。


    NSL社はステープ氏が兄のスラット氏、弟のニヨム氏らとともに共同で設立した家族経営の企業。全従業員は約240人。真鍮の溶融製造から掘削加工までを一貫して手がけている。もともとは真鍮素材の製造販売を専業としてきたが、品質の高さに注目した取引先から相次いで部品加工を依頼されたことがきっかけとなって順次事業を拡大していった。今では売上全体の60%が部品生産、残る40%が素材生産だ。家族経営は、意思決定の迅速化という効果も生んでいる。


    設立当初はバンコクに本拠を構えていたが、手狭となったことなどから1990年代に現在の場所へ。ここで、エアコンや家電、自動車の内部に装着する配管やバルブなどを生産し、日系メーカーなどに納めている。取引先はダイキン、三菱電機、リンナイなど日本の名だたる製造業ばかり。全取引の70%が実に日系で占められている。


■日本の住宅にも部品供給


    日本政府が進める「スマートハウス政策」をご存じだろうか。こんなところにもNSL社の製品が活かされている。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに、新築住宅すべてに省エネ基準を義務化させるという政府肝いりの政策。1年間の消費エネルギーよりも住宅で作られたエネルギーの方が多い、もしくは差がゼロになる住宅のことをいい、中枢を太陽光発電が占める。その電力を制御するメーターの中心部分に、同社の真鍮製品が使われている。時限まで4年。引き合いは絶え間がないという。


    取引先の日系企業の多くは当初、安価な中国製で代替しようと考えていた。ところが、真鍮の品質で劣ることが明らかとなり、高い精度を保ちながら安価で提供してくれるNSL社へとこぞって取引を切り替えた。真鍮部品を装着するプラスチックケースはベトナムで生産、アッセンブリは日本国内で行っている。今後も安定した受注が見込まれている。


    銅(Cu)に亜鉛(Zn)を加えた合金を真鍮、あるいは黄銅という。展延性に優れ、冷間加工にも適する万能素材。旋盤やフライス盤などによる切削加工も容易で、価格の面でも安価で安定的であることから精度が要求される金属加工の主要な原材料として古くから活用されてきた。同社が真鍮を主力とした背景には、こんな市場からの要請もあった。


■合弁相手を募集


    真鍮素材・部品製造で一定の業績と評価を上げられるようになった今、NSL社は新規事業を模索している。ターゲットとなる新たな素材はアルミニウム(Al)。軽量で高い熱電動性と電気伝導性を持ち、加工が容易で無害。合金であるジュラルミンは加工のしやすさから今では家庭用、工業用などさまざまな場面で活用されている。耐久性も高く、自動車や二輪車などの部品や車輪のホイールにも採用されている。


    同社は、このアルミニウムを社業発展の切り札と位置付けている。真鍮よりも価格面で安価。用途が広いことから将来性にも優れており、タイ政府が次世代産業として掲げるエアロスペース(航空産業)でも広く活用が見込まれている。「現在、タイでアルミニウム素材を事業としている企業はほとんどありません。私たちはその先駆けになろうと考えています」とステープ氏は話す。


    2、3年前から合弁相手となる外国企業を探している。日本、欧州、アメリカ。何度も足を運び、事業計画を提案しているが、現時点でまだ見合いは成立していない。婿探しは当面の課題だ。現在の主力である真鍮製品を丹念に作り続けることで信頼は得られると確認している。だから、焦りは一切ない。


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■無添加素材の開発も


    タイ投資委員会(BOI)の新恩典制度にASEAN経済共同体(AEC)の発足、さらにはタイ政府による産業クラスター政策の導入。ダイナミズムをもって変革を続けるタイの市場に、同社は自らの存在価値を強く認識している。「日系を中心に外国企業のタイ進出は当分続くと思いますが、国境がなくなり市場がグローバル化する中で、企業そのものは真価を問われるようになっています。産業を支える足腰の強い企業が求められていくでしょう」(ステープ氏)。


    金属素材は産業の根幹をなす。それだけに常に精度と技術革新が求められる厳しい世界。ステップ氏ら首脳陣は果敢にも挑む姿勢を決して崩さない。カドミウムや鉛の無添加素材の開発にもすでに成功した。さらなる新素材の研究も続けている。タイにある金属素材メーカー。その存在は実に頼もしい限りだ。




NSL Industry Co.,Ltd.


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