本以上に厳しい環境規制のなかで技術のさらなる飛躍を 広東省江門市にめっき団地が誕生

日本以上に厳しい環境規制のなかで
技術のさらなる飛躍を
広東省江門市にめっき団地が誕生

2012年12月、広東省江門に日本の表面処理技術が集結する工場団地が誕生した。その陣頭指揮を執るのは二葉産業株式会社。表面処理資材や設備の販売、めっき・塗装用治具の製造販売、カチオン電着塗装を柱に実績を重ねてきた同社。江門工場の開所式当日に、笠間董事長、相馬総経理、下村副総経理の3名に今後の抱負を聞いた。

◆ 江門における法人設立の経緯

表面処理は現在、中国の製造業で最も環境規制が厳しい分野の1つと言えるだろう。今回二葉産業が福塔巴表面処理材料(江門)有限公司を設立したのは、広東省江門市にあるめっき団地だ。この地を選んだ理由を、「環境規制問題を排除するのではなく、それを解決してクリアしていくことから技術の向上を図るという工業団地の考え方に共感したから」と笠間董事長は語る。同社は江門市新財富集団と戦略的パートナー関係を結び、ここに入居する企業に対して、表面処理材料、設備、治具製造、販売というトータルサポートを提供していく。

二葉産業は、日本製造業の中心的地域である愛知県名古屋市で1933年に創業。中国事業は2008年に中国香港に法人を設立したところから始まる。その後深圳にも法人を設立し、日系大手メーカーから自動硬質アルマイトライン、排水リサイクル装置プラント、自動亜鉛めっきライン等の製造を受注した実績をもつ。

◆ 表面処理技術の鍵を握る治具製造

江門工場ではめっきや塗装用治具の製造のほかに、ショールーム、メンテナンスセンター、分析センターを併設する。

まず同工場では、プレス機を10台、乾燥炉を2台ほど導入する予定だ。つまり、プレス機で治具の製品パーツを製造しパーツを組み立てて溶接、コーティングをした後に乾燥炉に入れて焼きつける一連の工程を行う。同社では、ワークのサイズや形状から生産ラインの特性を考慮した治具設計から請け負うが、それは治具をワークと薬品、設備をつなぐ重要部品のひとつと位置付けているため、特に不良や薬品の汲み出し量の提言など、トータルな提案をしているからだ。そして、これら製造ラインとメンテナンスセンターが隣接しているため、迅速なユーザー対応が可能だ。

また同社では、中国でメッキ自動装置 塗装自動装置の販売も行う。まず、細かいエンジニアリングを行ってから中国の外注先で製造しているため、高品質で低コストの機械を提案できるという。

◆ 中日の表面処理技術集積地へ

治具工場に隣接するショールームでは、自社技術の展示だけでなく、日本各地の表面処理系企業のサンプルと資料を展示する。また表面処理技術に必須とされる化学分析も行える体制が整う。こうした体制によって、今後は徐々に中国系企業の優秀な企業の情報を収集・選定し、発信していくという。

当面は現地での日本人の常駐は下村副総経理1人になるが、「これまで日本で技術提案営業をしてきた経験を活かし、いま中国の日系企業が抱えている表面処理に関するさまざま問題を解決していきたい」と、下村副総経理は言う。今回、自ら江門工場での勤務を志願し、工場オープンまで漕ぎ着けた。

今後はスタッフの育成、営業活動、また顧客フォローの体制構築など、本稼働への最終準備段階に入る。そして2013年の春には、工場の全容が整う予定だ。

◆ 中国と日本、表面処理技術の未来

現在、日本の表面処理業界は減速気味にある。一方の中国では、さまざまな創意工夫が試みられており、新技術が生み出されている。その理由の1つには、中国の厳しい環境規制がある。規制が厳しいからこそ、技術が高まるという側面があるのだ。

例えば、クロムやニッケルに対する規制や水のリサイクル率は中国のほうが厳しく、日本が中国のアイデアを学ぶ機会も増えてきている。

笠間董事長は、「こうした環境にあえて飛び込み、技術をオープンに伝えあって、中国の技術でもいいものは積極的に取り入れる。そうすることで、これから先の世界的な競争に勝ち残っていくことができる。自社のことを考えるだけでなく、他のメーカーのこともフルサポートしていく。ぜひ日本のめっき組合のような共同体を、ここ江門のめっき団地でも発展させていきたい」と意気込みを語る。

◆ トータルで切り拓く新しい技術

現在、表面処理関連の企業で、一流の設計能力を有し、トータルでサポートできる会社は極めて少ない。「日本、香港、深圳で培った技術の総合力をもとに、江門でも顧客企業の表面処理加工の付加価値をできるかぎり伸ばしたい」と、同社の相馬総経理は語る。中国に前後の加工工程がある以上、中国で表面加工をしていく必要があるからだ。

しかし、よい技術をもち、心づくしのサポートがあるとはいえ、まずは心が伝わらないと長い付き合いはできない。現在同社では、工業団地に訪れた日系企業を生活面でサポートする準備も進んでいるという。

また、工場のエントランスでは、日本の雑誌や簡単な物販を行う予定もある。こうした一歩が、国境を越えた人的交流や技術交流を生み、より環境に負荷をかけない新しい表面加工技術を生み出していくだろう。