高品質で日系自動車部品メーカーの信頼を獲得 中国台湾系メーカーの強さの秘訣

高品質で日系自動車部品メーカーの信頼を獲得
中国台湾系メーカーの強さの秘訣

2002年の大陸進出以降、着実に力を伸ばしている中国台湾のメーカー嘉興和新精冲科技有限公司。ハードディスクに使用される精密部品や自動車部品などのプレスと表面加工を得意とし、日系や欧米メーカーからの信頼も厚い。台湾本社は中国台湾での上場も果たした。今年、更なる飛躍を目指す郭廷棟副総経理に今後の抱負を聞いた。

◆ 外資系企業との信頼の実績

嘉興和新精冲科技有限公司は、ハードディスクドライブの大手メーカーであるSeagate(希捷科技)のサプライヤーとして中国大陸に進出。工場設立当初は、精密電子部品のニッケル加工を主力商品としていた。その後、2005年に欧米自動車メーカーのサプライチェーンに必須となるISO/TS16949 品質マネジメントシステムの認証を取得。また、自動車部品用に新たに高性能プレスマシンを完備し、前年比3割増の勢いで自動車関連部品の生産を伸ばした。0.2ミリから13ミリまでのプレスを行い、現在では自動車のドアロック、ブレーキ、トランスミッションなどの部品も得意としている。実は同社の日系企業との付き合いは長く、同社設立の間もないころまでさかのぼる。株式会社ホンダロックとの取引が始まり、今では中国で走っているホンダ車のドアロックすべてに、同社の部品が組み込まれるようになった。このほかにも、中国のトヨタ自動車や日産自動車でも、サプライチェーンの一部として組み込まれており、納品実績は多い。中国国内および欧米系の自動車メーカーも加えると、これまでに約30社の世界レベルの会社との取引実績があるという。「品質を満たすことが顧客満足につながる。私たちの製品の品質は、日本企業の要求にも十分にかなう水準にあります」。そう胸を張って語る郭副総経理の言葉には、実績に裏付けられた自信がある。

◆ 高品質を支える製造ライン

同社の品質を支えるのは、高品質な素材、高性能なマシン、検査技術、そして熟練した技術工たちだ。まず原材料となる鋼材は、鉄鋼大手メーカーとして世界的に有名な台湾中鋼(CHINA STEEL)を主に使用している。自動車用の特殊鋼の開発では世界的に定評があるうえに、価格競争力も高い。プレス機では、スイスFeintoolや森鉄工(MORI IRON)を導入、精密研磨機ではドイツのPeter-woltersのマシンを4台揃える。

めっき加工では、現在3ラインがオートメーションで稼働しており、毎日約40万個の塗装加工を行うことができる。同社の郭副総経理は、「自社にラインを備えるからこそ品質とコストで顧客のニーズを満たすことができ、それが競争力につながる」と語る。また、製品は全品検査を行うほか座標測量機も完備され、品質管理体制も万全に整えられている。同社がある太湖の周辺は中国でも特に排水の環境基準が厳しく、汚水濃度は0.1ppmと定められている。設立当初よりその環境水準に合わせて設計し投資してきたため、ここ数年の環境基準の引き上げにも十分に対応が可能だ。そのため、あらゆる企業のさまざまな表面加工のニーズに応えることができ、特にサプライチェーンを重視する自動車産業では、他の部品メーカーから表面処理加工だけを請け負うケースも増えてきている。

◆ 定着率も高く、現地化に成功

また、同社の強みは現場を担うスタッフの技術力の高さだ。現場スタッフには主に現地の人を雇用しているため、定着率が高く、中国台湾から移行されてきた技術も、蓄積と発展が順調に進んでいる。工場では約700人が働き、部門の責任者にも現地スタッフが多く登用されるようになってきた。

グループとしては、今回訪問した浙江省嘉興市の工場のほかに、中国台湾に本社機能、マレーシアにも工場をもつ。台湾本社は中国台湾で上場をはたし、現在は主に技術開発を担っている。本社スタッフは外資企業との協業経験も豊富なので、専門性が高いうえに顧客のニーズを速く、確実に、高品質な商品へと実現していくノウハウをもつ。同社グループの中で最大規模なのはこの嘉興市の工場で、現在、工場機能はほぼここに集められている。

中国は広いため、地域による文化や習慣の違いは多少なりともあるのではないかと伺ったところ、「本社の企業理念を伝え、ISOをはじめとする品質管理の必要性を繰り返し伝えた結果、現在ではまったく地域差が感じられないほどに現地化に成功している」と言う。中国台湾の管理ノウハウがうまく現地に浸透し、中国台湾系企業のよさが生かされている実例と言えるだろう。

◆ グローバルで活躍するトップが牽引

そして同社の強さの秘密はもう1つある。それは、現場で全権を担う郭副総経理自身だ。郭副総経理は中国台湾の台中市出身のエンジニアで、アメリカでのビジネス経験も長い。さらに、アメリカのパナソニックで要職に就いた経験もあり、日本のものづくり技術、品質、企業文化、そして世界市場における製品力を、まさにグローバルな視点から分析してきた。

こうした豊富な経験が同社総経理の目に留まり、請われて中国の工場を任されることになった。郭副総経理は日本のものづくりに対する真の尊敬心をこめて「ここ中国で、さらに日系企業との協業を進め、ものづくりを発展させていきたい」と意気込みを語る。

今年、同社では、さらなる業務拡大のために熱処理加工と金型加工のラインを拡充、自動倉庫管理システムを導入し、ますます多様化する顧客のニーズに応えていく予定だという。顧客が喜ぶ商品を投入するビジョンと行動力が、同社を牽引している原動力と言えるだろう。

こうしたチャレンジ精神こそが、中国台湾系企業のもつ強さなのだろう。