金型によって無限の創造性が生まれるプレス加工 確かな技術と柔軟な発想で、世界をリード

金型によって無限の創造性が生まれるプレス加工 確かな技術と柔軟な発想で、世界をリード

決して華やかではないが、商品の先進性や特長を決める大切な技術「プレス金型」。部品ごとに込められたこの「縁の下の力持ち」となるノウハウこそが、日本製品が世界であこがれの対象となる原動力となった。 今回は、日本製品を支え続けてきた横浜市の和光精機、伊藤國男社長に話を伺った。

◆金型の可能性を広げ、技術革新を続けた32年

金型は、考える人の発想力と応用力によって大きく進化し、無限の可能性が広がる。

創業以来32年、よりよい金型を求める人が絶えず扉を叩く工場が日本横浜市にある。独創的な金型設計を行う株式会社和光精機だ。同社は、顧客の要望に応えることによって信頼を集め、評判が口コミで次々と繋がるために、これまで営業員を置いたことがないという。

中国の工場に比べたら規模は格段に小さく見える。しかし、世界に誇れる技術を持つ。これぞ日本の製造業を支えてきた中小企業の鑑とも言える工場だ。

多くの日本企業が、コスト削減のために中国に工場を構えたが、同社の伊藤社長によると、「日本のほうが安くて、しかも安定したものが作れることがある」と言う。ただし、完成品があってそれを部品に細分化し、納期と経費を調整して製造するという従来の考え方の中にいたのでは難しい。

◆アイデアと工夫が詰まった複合型の金型

同社が設計する金型では、単にプレスするだけではなく、スプリングなども組み込めてしまうので、3~4工程を一気に行う複合機のイメージに近い。通常では1枚の板から1個の製品を作るのがふつうだが、考え方としては1枚で数種を作る要領になり、そのため従来であれば溶接や組み立てを行っていた工程が省略できる。

例えば、携帯電話のバイブレーション機能に必要なペジャーモーターでは、これまで整流子を溶接でつけていたものが、プレスだけで成型可能になった。

精密部品だけでなく、また、昔からあるもので意外に難しいのが足袋のこはぜ。以前は治具を駆使して作っていたそうだが、職人がいなくなり技術が途切れた。そこで同社では新しい方法を考案。型で抜いた後に周囲に57mmのワイヤーを巻きつけて完成する方法を生み出したが、これをプレスだけで行ってしまう。しかもspm120で、つまり1秒間に2個巻くという高速だ。

こうした技術は、伊藤社長の柔軟な設計力と金型職人たちの創意工夫によって実現した。「パンチはダイがないと抜けないと考えがちですが、ダイがなくても抜けます」と、伊藤社長は笑いながら語る。プレス金型の進化は、量産の加工性ばかりか、品質の安定とコストパフォーマンスも向上してくれる。

◆日本国内で製造したほうが安くなることもある

プレスによって作られたとは、にわかには信じがたい製品が並ぶ同社。「金型」と言っても、ここにしかない複合型が技術を支え、それがまた新しい技術を生み出している。現在、横浜の工場では金型を製作、新潟、長野小室の工場で量産を行っている。中国の窓口は、昆山和之光複合精密電子有限公司にある。

いま、中国で作ることが単純にコスト削減につながった時代は終わった。日本には日本が得意とする創意工夫があり、場合によっては日本国内で作ったほうが安くいいものができることもある。これからの日中の製造業における協業では、それぞれの長所を持ち寄って分業していくことが重要となっていくだろう。

特に、金型の使い方などの習慣の背景に、日本と中国では大きな違いがある。メンテナンスが重要なプレス金型では、金型を大切に使えば使うほど生産性は上がる。しかし、中国ではそのメンテナンスがおろそかにされ、徐々に日中の生産量に差が出てくることも多い。技術の伝承は簡単なことではなく、ましてや柔軟な創意 工夫を支える発想力や応用力、そして独創性は、国籍を問わず極めて伝承が難しいものだ。

◆特許3つ、実用新案1つの実力と実績

常に最先端の金型を牽引する同社は、顧客との機密保持契約もあって、残念ながら誌面上では最先端の金型を公開できないが、不況の中にあっても営業員を置かず業務規模を拡大している事実、また特許を3つ、実用新案を1つもつ実績からも、まさしく世界トップクラスの実力だと言えるだろう。

独創的なアイデアを特許とした理由を聞いたところ、「検査項目と内容があまりにも難しく、品質を保証するための検査システムだけで莫大な資金が必要となることから、いっそのこと特許にして、みんなが使えるようにした」ということだ。現在、同社の顧客企業で商品化されている。

また。同社では以前、携帯電話メーカーの要求以上に小さくてよいものを作りすぎたために、他社が同種のものを作れず、よすぎて逆に採用されなかったと言う笑い話もある。

同社の横浜工場では、まるで自分の子どもをなでるように機械を扱う職人たちが、丁寧で心がこもった作業を黙々と続けていた。一番難しいのは、やり方や方法の伝承ではなく、こうした心の伝承だ。

日本国内でも年代による価値観の違いがあり、ましてや中国では文化背景が違う。それでも、自らの技術を惜しみなく開示、説明してくれる伊藤社長や社風を慕い、中国や中国台湾からも多くの人が同社に集まる。日本の得意とする技術力と創意工夫を楽しむ遊び心、それが中国の人たちと新しいモノづくりの協業体制の未来を拓きそうだ。

中国国内連絡先:
昆山和之光複合精密電子有限公司
江蘇省昆山巿城北模具路169号(勗祥模具内)
Tel: 0512-5500-8957 Fax: 0512-5500-8950
E-mail: jimmy@wakoseiki.biz
総経理 曾永彬(Jimmy Tseng)