根底から創り上げる飽くなき技術力/下請けでは終わらない「部品屋」の挑戦

CASTEM (THAILAND) CO., LTD.

 

    ロウ(蝋)を使って鋳型を得る「ロストワックス」製法と、金属粉を含有したコンパウンドを射出して形成する「メタルインジェクション」製法の2つの製法を駆使して、医療機器・工作機械といった産業機械部品らファスナー、バッグの金具といった雑貨用品まで幅広く金属部品の製造供給を行っているのが、広島県福山市のキャステム(戸田拓夫社長)。1970年の創業は、間もなく半世紀を迎える。プライドと誇りを持った職人集団。その高い技術と根底から創り上げようとする飽くなき追求力は、ライバル他社からも一目置かれる存在だ。技術にかける思いについて、戸田社長に話を聞いた。

 

「部品屋」が勝ち残る道


    「他社がやりたがるものは深追いしない。他社がやりたがらないものをうちがやる。少し厄介なものがいい。それが社是」。こう戸田社長が言い切るとおり、キャステムの受注は多品種少ロットのものが多い。量産品よりも希少性の高い高級品、特注品。結果、それが技術力の向上、ひいては社の成長につながると考えているからだ。 2035年を目標年とした「キャステム2035年構想」では、グループの年間売上高を現在の20倍、1000億円に置く。冷ややかに揶揄する声もあるというが、ブレは全く感じさせない。到達まであと20年。現状の積 み重ねだけでは不可能なのは誰でも分かる。ならば、どうすればいいか。付加価値の高い仕事を創り上げていくには。未開の地を掘り起こしていくには。

 

    「こういうものが作りたい」と顧客が切り出しても、金型が高価なところで結局、諦めてしまうのが現状だ。そうではない。顧客と共に考える。デザインも一緒に始めから考える。根底から創り上げようという飽くなき追求力。これが、この業界で何よりも必要なことと考えている。「機械を操作するだけが仕事と思っていたら大間違いだ」 組立メーカーをトップに、ティア1、ティア2と連なるサプライチェーン。得てして「部品屋」はこの巨大な網の目の一区画に位置づけられ、埋もれてしまう。だが、「もはや、そんな時代ではない」が戸田社長の考えだ。強い商品力、高い企画力を持ってすれば、これまで元請けだった顧客と顧客を結びつけることだって可能ではないか。新しい商品を提案することだってできるのではないか。

 

    キャステムには累積2000社という、途方もない顧客とのネットワークがある。これまで出会うことのなかったメーカーとメーカーが、新たな商品開発の場で手を組んだっていい。相互に補完し合ってもいい。そうした出会いの場を提供したい。それが「部品屋」が勝ち残る道と考える。そういう時期に来ていると心から信じている。「部品メーカーが下請けで終わっていてはダメだ」
 

 

 

「菓子製造業からのスタート」


    創業時のメインの事業が「菓子製造」と聞いて、驚く人も多いに違いない。クッキーにカステラ、まんじゅう…。戸田社長の父だった創業者が独り身で起こしたものだ。戦時中、満州開拓義勇軍の機械修理班で活躍していた父。圧倒的な生産力の差の前に、「精密鋳造技術がないと国は成長できない」と痛感した。技術を元に造っていくのは、工業品も菓子も原理は同じ。キャステムの原点はこんなところにあった。

 

きれいな肌を持つキャステムのメタルインジェクションは、 歯車・カム・ローレート等をシャープに仕上げます。 き細かいもの・薄い物は得意とするところで、 従来にないデザインが可能です。
小さな穴・ 異形の穴・ 袋穴等、 高精度できれいに仕上がります。 小さな物、複雑な形状になるほど、キャステムのメタルインジェクションは強みを発揮します

 

 

 

 

    その父が菓子屋を兄に託し、精密鋳造会社を立ち上げたのは1970年のことだった。当時、日本は先進国の仲間入りをしようと、工業化に力を入れていた。ライバルメーカーは乱立。厳しい経営が続いていた。そんな時、父が決断した。高校生だった息子の現社長を呼び寄せて、こう言った。「品質に活路を求めるなら、科学技術にこだわらなくてはならない。お前、大学では化学を専攻しろ」 


    戸田社長が父の会社に入社したころ、キャステムは大きな転機を迎えていた。従来からの繊維産業が減速し新しい分野としてコンピュータ用部品としてボイスコイルモータ(VCM)を大量生産できないか、との依頼が舞い込んだのだった。ほぼ初めてに近いまとまった注文。ただ、予算は見積の半値と条件は厳しかった。受けるか、受けざるべきか。新たなリーダーとなった戸田社長(当時は部長)の出した答えは明快だった。「やってみようじゃないか」。見事なまでの決断だった。


    夜を徹して試作を繰り返す。一つ、また一つとハードルがクリアされていく。コストダウンに成功し、どうにか利益が出せると分かって来た時、その高い性能への評価から受注量は1万個から3万個へと増えていった。こうして、ロストワックス製法を採り入れたキャステムの製品は市場へと広くお目見えをしていった。80年代前半。会社の大きな転換期だった。

 

 

「メタルインジェクション」との出会い

    二度目の転機は、それから数年後に訪れた。原田知世主演の映画「私をスキーに連れてって」が爆発的なヒットを遂げた80年代末。日本各地のスキー場では、ある鋳造品をめぐって静かなブームに沸いていた。リフトを吊るすアームとケーブルの連結部品には、安全面から長らく鍛造品が用いられてきた。そこにキャステムが開発した新型の鋳造部品が市場投入され、一気に切り替わったのだった。 


    キャステムが開発した鋳造部品には、史上最高の強度と靭性を誇るとされるSNCM439が使われていた。ニッケル、クロム、モリブデンが付加された複合素材。同社の高い技術力を知った商社が仲介役を果たした。この大量注文をきっかけに、キャステムの名は全国へと浸透をしていった。製造業に限らず装飾品など、業種を問わず注文が舞い込むようになったのは、これ以降のことだった。 


    90年代に入ると、産業界では、より極小の精密部品の需要が増すようになっていった。あまりの小サイズのため、鋳造ではとても太刀打ちできない。「くしゃみをすれば、消えてしまいそうなものばかりだった」と戸田社長。きっかけを得ようと、射出成形の技術を視察しにアメリカに渡った。確立されたばかりの新技術「メタルインジェクション」との出会いだった。


    革命的な技術だった。だが、知的財産権があり、そのままでは日本に持ち込めない。そこで、戸田社長は自社開発を決断。91年に米国特許を取得し、日本での生産を開始した。核となるのは、かつて先代の社長が腐心した原材料の化合混合技術。粉末状の金属粉とバインダーを混ぜ合わせ、射出成型し、脱脂焼結し目的に合った硬度・強度の部品を創り上げる応用技術だった。

 

 

 

フィリピン・タイ、そしてコロンビアへ

    バブル崩壊後の90年代半ばからは、積極的に海外展開を進めて い る 。9 5 年 に は フィリ ピン、2002年にはタイに進出。縮小の続く日本市場。長期的に考えた時、当然の帰結だった。今では両国にそれぞれ2つの法人を置いて、ロストワックス製法とメタルインジェクション製法の各ラインを稼働させている。当時、中国を目指した企業が多くあったが、反日リスクを考えると絶対に選ぶことはできなかった。


     海外工場だからといって、妥協は一切許されない。常にそういう姿勢で臨んでいる。「我社は品質と納期で勝負する」と戸田社長。本格的な世界進出を考えた時の譲れない一線だった。現在は南米コロンビアに新たに工場を建設中。米ヒューストンに現地販売法人を設立し、アメリカ本土の市場を狙う。主要なターゲットに医療機器業界や航空宇宙業界がある。


    総合部品メーカー社長のほかに、「折り紙ヒコーキ協会会長」という異色の肩書きを持つのが戸田社長だ。学生時代に身体を壊し、病臥にいた時のこと。400種の折り紙飛行機を考案し、見舞い客を驚かせた。「ヒコーキにしても、グライダーや凧にしても、空気をうまく掴み、音も立てずに飛んでいく。まさに技術の結晶。一枚の紙を技術のみで作り上げていく、その過程
にのめり込んだ」 


    2008年のリーマンショックでは、キャステムも並ならぬ損害を計上した。社内に漂う重たいムード。何とかこれを打破したいと思った時に考えたのが、折り紙 飛行機の滞空時間のギネスブック記録を破ることだった。「停滞を打ち破る原動力は、技術でなければならない」。そう信じた戸田社長が出した記録は29.2
秒。従来の世界記録27.6秒を大きく上回り、未だにこの記録は破られていない。 


    パワーでは勝てないから、投法を工夫した。握る部分を極限の5ミリまで落とした。たかが、紙ヒコーキ。されど、紙ヒコーキ。「少しの曲がりや折れが、空気を掴んでは胴体を浮上させる。これぞ技術の醍醐味」。キャステムの戸田社長が技術にこだわる所以だ。
 



CASTEM (THAILAND) CO., LTD.

968 Moo 5, Soi Soonthornwasu, Pheakasa Road, Tambol Pheakasa-mai, Amphur Muangsamutprakarn, Samutprakarn 10280

Tel. 02-324-3027-9

楠田 098-827-4278

URL: http://www.castem.co.jp

大木: 098-260-9206


CASTEM (SIAM) CO., LTD.

Amata Nakorn Industrial Estate (Phase 4)

700/408 Moo 7, Tambol Donhuaroh, Amphur Muangchonburi,Chonburi 20000

Tel. 038-717-402-3



『FNA MAGAZINE THAILAND』掲載ページのPDF版をダウンロード