ものづくりの根本は“ひと”  人材を育成しながら固有技術力を発揮し、世界一のサーボドライブ生産工場を目指す

 

安川電機(瀋陽)有限公司
YASKAWA ELECTRIC (SHENYANG) CO., LTD.

 

 

住所:辽宁省沈阳市沈阳技术开发区开发大路34甲5号
電話:024-2518-5555

 

 

安川電機(瀋陽)有限公司

 

工場長 白石 聡(Shiraishi Satoru)

 

 

先日発表された、安川電機の2015年3月期連結決算は、売上高が前期比10%増の4001億円。純利益は46%増の248億円で、7期ぶりに過去最高を更新した。その好成績に大きく貢献しているひとつに、サーボドライブを製造する「安川電機(瀋陽)有限公司」の存在がある。産業用ロボットでトップシェアを誇る安川電機だが、その正確無比な動きを支えているのは、同じくトップシェアを誇るサーボドライブなのだ。

 

今年2月に累積100万セットを達成

 

安川電機のサーボドライブは、工作機械や自動化設備の性能を左右する、まさに心臓部といえる基幹部品である。同社にとって、中国で最初のサーボドライブ製造拠点に選ばれたのが、遼寧省瀋陽市だった。市政府からの熱心な誘致に加え、瀋陽市が重工業の盛んな東北3省の中心都市であり、工作機械メーカが集積していることも決めてとなった。既に上海の工場でサーボドライブを生産し中国全土での最適生産を検討していた安川電機にとって北の地(瀋陽)での工場稼動は未来をも想像した選択だったわけである。

 

2008年に現法を設立し、10年に生産を開始した。12年には第二工場が稼働開始。生産量はこの2月に累積100万セットを達成した。50万セットに到達したのが14年だったので、生産量は急激に伸びている。いまやその生産量は、日本をも上回る。

 

製品の供給先は、中国国内が約85%で、そのうち8%は、14年より産業用ロボットの生産を開始した「安川(中国)機器人有限公司」で使用されている。15%は韓国、欧州、米国に輸出されている。

 

安川電機(瀋陽)有限公司

 

写真左:安川電機(瀋陽)有限公司では人材育成を重視。安川電機本社の日本人が技術を叩き込む。
写真右:部品の受け入れ検査は、日本並みの基準。基幹部品は全数検査する。

 

日本ではサーボドライブのシェアが30%を超える安川電機も、中国では12年時点で19%に過ぎなかった。ところが14年には26%まで上昇し、15年はいよいよ30%を視野に入れる。

 

中国では、人件費の高騰を背景に自動化が急速に進んでいる。それにともない、自動化設備の要となるサーボドライブの市場も毎年14%程度という高い成長率で拡大している。その牽引役は、スマートフォン(スマホ)業界だ。スマホは世界中で需要が伸び、14年の出荷台数は13億台に達しているが、その多くが中国で生産されている。今後は買い替え需要もあるし、モデルチェンジで設備が入れ替わる可能性もあるので、「スマホ業界の需要はこのまましばらく続くだろう」と安川電機(瀋陽)有限公司の白石聡工場長は予測する。

 

ほかの業界では、地下鉄や高速鉄道などの車両用ばねの製造設備メーカーからの受注が伸びているという。車両に使用されるバネは大小さまざまで技術力を要するが、地下鉄も高速鉄道も全国的に建設が進められているので、需要は底堅い。

 

将来的に期待されるのは、半導体業界だ。同社は日本国内では、半導体、電子部品、液晶設備向けが大きなシェアを占めている。中国でも半導体は製造されているが、装置メーカーのほとんどがまだ現地生産をしていない。今後進出が進み、需要が生まれる可能がある。

 

安川電機(瀋陽)有限公司

 

写真:小型サーボモーター生産ライン巻線工程。ひとりが8台の自動巻線機を操る。自動巻線機には安川電機のサーボドライブが使用されている。

 

ナノ領域へと突入するサーボモータ

 

サーボドライブの性能で重要な要素は、高速・高精度な位置決めだが、14年に発売した「Σ(シグマ)7」は、エンコーダの分解能が従来製品の20bitから24bitに向上。ナノメートル領域までの制御を実現している。

 

ただし、いくら高性能であっても、中国市場でシェアを拡大するためには、それだけでは十分条件にならない。中国企業への「対応力」が必要だ。

 

「QCD(品質・価格・納期)のなかで高品質は当たり前だが、(現地生産を開始する前に)日本から輸入しているときは、納期と価格が課題だった。いまは部品の90%以上が中国国内での調達なので、コストはかなり下げられている。納期も迅速に対応している」(白石氏)

 

中国企業は、日本企業とはスピード感がまったく違うので、「来週までに製品がほしい」という要求も珍しくない。瀋陽工場は柔軟性高い生産ラインを24時間稼働しているので、そうした難しい要望にも対応できるのが強みだ。

 

また新製品である∑-7では 従来比2倍の生産性を目指しており、対応力がさらに増強する見通しだ。

 

12年には、工場内に開発センターも開設した。グローバルで開発してくという本社の方針によるものだが、中国ユーザーの要求にさらに迅速に対応できるようになった。たとえば、中国企業の性能や仕様に対する要求は日本のそれとは違う。そうすると、サーボモータについても既存製品とは違った性能を求められることがある。そうしたニーズに応えるべく中国国内で市場やアプリケーションに適合した製品を開発し継続的に市場に提供している。こうした顧客に寄り添う姿勢が、同社のトップシェアを盤石なものにする。

 

安川電機(瀋陽)有限公司

 

写真左:自動巻線後の組立工程、右:成形後、さらに精度をあげるための加工工程

 

全数トレーサビリティを確保

 

800名以上の従業員を抱える同社では、人材教育にも力を入れている。まず安全と5Sを徹底。そして作業者のレベルを8段階に分け、工程をひとつマスターするたびに等級が上がる仕組みになっている。1級レベルになると班長候補となることができる。こうして従業員のモチベーションを刺激しているのだ。

 

1個の製品にはさまざまな人間が関わるが、ひとりが複数の工程を担当したり、日勤、夜勤で担当が変わったりするので、チェックシートに作業完了のチェックとサインをさせる。作業者に一つ一つの作業の重みを十分理解させ、責任を持たせることと、トレーサビリティの確保を両立させているのだ。

 

安川電機(瀋陽)有限公司

 

写真左:24ビットエンコーダの製造工程、右:モータ組立工程

 

中国の生産コスト上昇に加え、為替の問題もあり、いま再び「チャイナ・プラス・ワン」が取り沙汰されている。しかし、コストが合えばどこでも同じようなものづくりができるのかというと、そうではない。「根っこの部分はひとだ」と白石氏は強調する。

 

「ひとがいてはじめて、QCDに長けたものづくりができる。手前味噌だが、瀋陽の人間は真面目で、当社の離職率も低い。人材を育てながら、世界で戦えるナンバーワンの製品を作り出すのがこの工場の使命。世界一のサーボドライブ工場を目指したい」(白石氏)

 

北の地で、安川電機が中国の産業高度化に貢献する。