ハイエンド・高品質製品を生み出す 平澤流モチベーションマネジメント

 

株式会社 タイ池田MFG.

THAI IKEDA MFG. CO., LTD. (TIM)

 

株式会社 タイ池田MFG.

 

 

ハイエンド・高品質製品を生み出す
平澤流モチベーションマネジメント

 

    昨今、タイ経済を牽引している自動車産業。チャンスが多い反面競争も熾烈だ。そんな中、Tire2として、ハイエンド・高品質なプレス部品を提供し続け、特異なポジションを築いている企業がある。そしてそれはシンプルではありながら非常に強力なマネジメント層の経営哲学によって実現している。

 

ファミリー経営

 

    「この会社をファミリーにしたい」。以前は誰もが知る欧米系の大手メーカーでロジカルなマネジメント手法を徹底的に実践していた経験も合わせ持ちながら、THAI IKEDA MFG.の代表として組織を引っ張る立場となった平澤社長。話を伺うと、如何にモチベーションアップさせるか、如何に巻き込むかというような”人”にフォーカスをあてた人情味に溢れた話が非常に多い。

 

    その考え方の一端を見ることができるのが、同社の生産ラインにおける10ヶ条だ。生産ラインで働く従業員が注意すべき点をまとめたリストで、毎朝各ラインで唱和しているが、最初に作られた規則は「不良は赤箱に入れないといけない」「休憩に入る前に半完成品をちょい置きしてはいけない」といった内容だった。会社から押し付けられる法律のような印象を受けた平澤社長は、これを、「私は不良品を赤箱に入れます!」「私は休憩に入る前に半完成品をちょい置きしません!」と一人称に変えた。また、10ヶ条全てを唱和すると従業員が集中できずに覚えることができないため、毎日3つを選んで順次唱和して行く形に変えた。更にそもそも“ちょい置き*1とは何か”が従業員に伝わっていないと感じたため、文章ではなく専用の動画まで作ってみんなで理解を深めた。

 

    従業員約550名の工場において、上記のような細かな部分にまで社長が自ら関わり、従業員の視線で一緒にルールを作成し、定着するまでフォローしているところに、人に関わるマネジメントの拘りを感じる。実際その効果として昨年の9月頃から劇的に生産性が向上した。

 

*1 ちょい置き・・・作業中の製品を休憩に向かう際、一時的に不適切な所へ置いてしまう行為。従業員が戻った際に、そのことをうっかり忘れていたり、別の従業員がそれを後工程に流してしまうことで不良品が流出する原因となる。

 

同社が提供する製品

 

    同社はタイで操業して今年20年の節目を迎える。初期の1995-2009年頃までは、自動車の金属部品の中でもシャーシやサスペンションに関わる部品が7割程度を占めていた。現在ではエンジンやパワートレイン等の難易度の高い部品が4割程度を占めている。難易度の高い部品は、現地調達が望まれながら、まだまだ日本で製造されているものが多いが、メーカーの依頼で新たな部品の現地化開発を行なっている例も多数存在する。「1歩先ではだめ、2歩、3歩他社よりも先に出ないと」という姿勢を持つ同社は、タイのプレスメーカーではまだ珍しい、プレス-溶接-塗装の全てのラインを自社で一貫生産可能な体制を保有しており、工法についても、プレスのみではなく、板鍛造、冷間鍛造、切削加工工程も取り込んでいる。顧客からしてみると様々な部品を安心して依頼できる体制が整っている。

 

株式会社 タイ池田MFG.

 

品質は工程で作りこむ

 

    同社で非常に特徴的なのは溶接工程だ。元々溶接工程は3Kの色が濃い職場であり、匂いがきつい溶接後の煙は現場従業員から好まれていない。また炭酸ガスのシールドを壊さない様にする為、遮蔽した空間による暑い環境での作業が強いられる。よって従業員の定着率も低く、品質を安定させることも非常に難しい工程である。そんな中、同社は外気が入らない空調付きの密閉空間で溶接を行なっている。これは溶接の煙を排気したい、しかしながら外気は入らないようにするという二律背反の条件を満たす必要がある難題であったが、同社はそれを実現してしまった。

 

    具体的には各溶接機の溶接が行なわれる部分や、溶接後に製品を置く場所で排気を行なうための局所ダクトを細かく配置して溶接による煙を排出している。ロボット溶接では、ロボット全体をブースで囲み、ブース内は全て排気、従業員はブースの扉を開いて必要時だけ溶接する製品の取出しや取付けをするといったような方法だ。

 

株式会社 タイ池田MFG.

 

写真左:室内溶接工場。右:ロボット溶接工程

 

    結果として、現在では溶接工程が従業員に最も人気の高い職場となり、定着率も高まったため品質も向上した。更に溶接工程の全てを管理するためのWelding Control Team を組織し、ついつい検査が甘くなりがちな破壊検査についても誰もが目に見えるように結果を展示し、専任が3次元測定器を使って精度検査しているという徹底ぶりだ、合わせて品管測定室にはタイで導入1台目となる3Dレーザースキャンで再現性を高めている。

 

株式会社 タイ池田MFG.

 

写真:非接触レーザー3D測定機

 

    ここでも平澤社長の経営に関する考え方の原点が垣間見える。これらが実現したのは「従業員が働きやすい環境で仕事に集中して欲しい」という思いから始まっている。数億円の投資と、その思いに動かされて、多くの従業員が何度もトライアンドエラーを繰り返して実現した結果であり、他社でも実現していない溶接専門工場がタイで完成した。

 

    本業のプレスにおいても、進化し続けている。同社はトン数の異なるプレス機を連結したロボットラインを5ライン保有しているが、例えば200t (Cフレーム)3台、 630t(門型冷間鍛造プレス)1台、200t (Cフレーム)3台、と7台を連結したようなラインを保有している。これらはロボットライン専用に工作機メーカーと様々な調整を行い、他社の工場には存在しないオリジナルラインであり、より平坦な面を強く成形したり、複雑な3D形状を成形する必要がある製品については、このラインが有効である。

 

    QC工程でも他の工場では中々見ることができない風景が見られる。日本の工場であっても、ラインでは紙の作業指示書を用意して、工程が変わった際には新たなものに差し替える作業を行っている場合が多いが、同社では作業指示書が電子ディスプレイに表示される形になっている。

 

株式会社 タイ池田MFG.

 

写真:QC工程

 

    つまり作業指示書をサーバーで一括管理し、電子媒体でアップデート情報が確実に全検査台に反映される。作業指示書の差し替え作業が不要となり、差し替えのミスを起こさず、どこかの検査台で発生したミスの改善策を全検査台に確実に反映させることができる仕組みだ。

 

よい製品かどうか。それは顧客が製品の受入検査で品質を評価すれば判断することができる。

 

    よい製品や新たな製品の開発を安心して継続的に依頼できるかどうか。それは単一製品の評価では判断できない。その企業がどのような企業文化を持ち、どのようにチームとして働き、総合的に何を提供できるかが問われる。

 

    つい先日、小さな事故が工場で起こった。その場にいた従業員がすぐに適切な初期対応を行い、他の従業員が避難を誘導したため、全く大事には至らず製造もすぐに再開できた。普通なら、いざ緊急時になるとなかなか適切な処置ができないもの。

 

    素晴らしい対応をしてくれた従業員に社長は頭を下げてお礼を言った。従業員は「この会社のためになりたいと思っているので的確な対応が行えた」と言ってくれたそうだ。

 

    「社長冥利に尽きる涙の出る言葉で、この会社、この国でマネジメントがやれてよかった」平澤社長の言葉だ。

 

 

株式会社 タイ池田MFG.

 


 

THAI IKEDA MFG. CO., LTD. (TIM)

取扱品目:金属プレスの自動車部品の製造販売

 

President:平澤 和俊 (Mr. Kazutoshi Hirasawa) (JP)
Sales:Ms. Sunanta Somchit (TH)
住所:789/25, 789/80 Moo 1 Pinthong Industrial Estate,Nongkoh-Laemchabang Road, Tambol Nongkarm, Amphur Sriracha, Chonburi 20230
電話:+66-3-829-6328-30

sales@ikeda.co.th

『FNA MAGAZINE THAILAND』掲載ページのPDF版をダウンロード