日本の生産技術と中国の管理手法を組み合わせた“ハイブリッド工場”が日本企業の調達に貢献

上海日建精密機械有限公司
会員番号:62886
所在地:上海金山区板橋東路428号16棟  
電話番号:021-5195-3554*808  担当者:任運昌

 ある日系企業専門のコンサルティング会社は、顧客から仕入先に困っているとの相談を受けた。「いっその事、おたくでやれないか」——それは顧客が冗談で発した一言だったかもしれないが、実際にこのコンサルティング会社は製造業に参入することにした。その会社が、2011年に設立された「上海日建精密機械有限公司」だ。


上海日建精密機械有限公司労務管理改革で脱赤字 生産効率が30%向上

 切削加工に従事する上海日建は多品種小ロットを得意とし、半導体製造装置や産業用機械、医療機器などの部品を製造。全生産量の9割を日本に輸出している。


 同社は設立当初から中国国内の企業ではなく、日本国内の企業を競合相手と想定してきた。高齢化が進む日本では若い働き手が減り、製造業は人手不足に悩まされている。「数年後には、間違いなく日本国内の仕入先が減る」(任運昌・取締役技術部長)との考えから、日本の企業をターゲットとしたのだった。


 とはいえ、2台の工作機械と3名の従業員でスタートした同社の門出はけっして順風満帆ではなかった。顧客は半導体製造装置を製造していたため、品質の要求が厳しかった。日本人の技術顧問が指導したものの、初年度は試作だけで終わった。


 12年に工場を移転し、ようやく正式に量産がスタートした。しかし、15年に危機が訪れた。当初、その顧客は慎重だったため受注量は少量だったが、15年に一気に拡大したのだ。生産が間に合わないため、設備をどんどん導入し、人員も68名まで増やした。ところが、月の出荷額が70万元に達しても赤字だった。人件費の上昇と設備の減価償却が重くのしかかったのだ。


 そこで16年から労務管理の方法を変えた。技術部と事務以外の現場の従業員をチーム編成することにしたのだ。たとえば同社では、マシニングセンタは技術部の2台を除くと12台を保有している。これを6台ずつに分けて2チームにした。各チームのリーダーを指名して、独立採算制を採用。材料費から人件費、設備の減価償却に至るまでチーム内で計上し、生産した良品に応じて会社は加工費をリーダーに支払う。リーダーがそこからメンバーに分配するのだ。


 赤字体質の時は、不良率の高止まりが課題だった。従業員全員が、ものをつくることを自分とは無関係なことだと考えていたからだ。かといってペナルティを徴収すると、すぐに辞めてしまう。ところが制度を変えてからは、不良品を出したらチームで責任を負う一方で、利益が増加すれば報酬が増えるため、不良品を減らすことを真剣に考えるようになったのだ。


 1人当たりの給与は上昇したが、人員が64名から48名に減り、給与総額はあまり変わらなかった。ところが生産効率は30%も向上。従業員の離職も急激に減った。倒産してもおかしくないほど膨らんだ赤字は、中国の実情に合わせた管理によって、わずか10カ月で解消した。「中国ではやり方次第で会社がガラリと変わる。一般的に中国企業の品質が安定しないのは、従業員のことを考えていないから。この部分を考えていかないと、なかなか改善しない」と任運昌・取締役技術部長は指摘する。


 このように、社員のモチベーションを向上させることで生産効率を高めてきた同社だが、それをさらに進め、優秀な社員には独立する機会を与えることを考えている。そこから製品を調達する、いわば同社の関連会社といった位置づけだ。現場の社員はすべて地方出身者であるため、彼らにとって、地元に帰って起業するチャンスになる。また、上海の人件費は相対的に高いので、製造拠点を地方に分散することで、同社のコスト削減にもつながるのだ。



上海日建精密機械有限公司


ロット管理と全数検査で不良率1万分の3を達成

 同社の特徴は労務管理だけではない。顧客がすべて日本企業であるため、日本並みの品質を実現するために、同社は厳しい生産管理体制を敷いている。まず材料だが、1種類の素材につき3社の仕入先を確保。定期的に上海宝山鉄鋼研究所や上海材料研究所に依頼して成分分析を行い、問題があった場合に即他社からの調達に切り替えられるよう、リスクヘッジをしているのだ。しかし、外部での検査には限界があるので、 分析装置の導入を検討している。


 そうして調達した材料は、加工から検査、製品出荷に至るまで厳格にロット管理される。ロット管理表により、万一製品に問題があった場合にトレーサビリティを確保できるようになっているのだ。それらは統合基幹業務システム(ERP)で管理されているが、来年には製造現場に液晶モニターを設置し、作業者が画面で受注状況や進捗状況を確認できるようになる。同社は、積極的に見える化を進めている。


 製造においては、各工程で作業基準書を作成している。製造工程を標準化することで、品質の安定と製造コスト削減を図っているのだ。過去の不良原因や改善点なども記載し、同じ失敗を繰り返さないよう工夫がなされている。刃物は使用後に顕微鏡で確認し、再使用可能かどうかを確認。刃物の不可事例もその都度、管理仕様書に追加 している。


 同社の工場では仕上げ加工のみを行い、粗加工は外注しているが、監査や定期指導を行うことで、外注先も厳格に管理している。また、品質管理については、自社で開発した治具で全数検査を実施。顧客の検査項目に合わせて検査しているため、顧客側は入荷検査をする必要がない。顧客の工数削減にも貢献しているのだ。


こうした厳しい管理により、「日本では一般的に、不良率は1万分の6。我々は1万分の3を達成しており、日本の品質を超えた」と任氏は自負する。


上海日建精密機械有限公司


日本企業との協業で完成品メーカーを目指す

 売上高が順調に推移するなか、同社は次のフェーズに進もうとしている。付加価値を高めるために複数の部品を組み立て、ユニットにして納めようというのだ。将来的には、同社本社工場ではアセンブリと品質管理だけを行い、加工は地方で行う。その加工を担うのが、独立を後押しする優秀な社員というわけだ。


 さらにはその次のフェーズを見据える。それは、完成品メーカーになることだ。日本には、製品競争力がありながら企業体力がないために海外進出が難しい中小・零細の装置メーカーが少なくない。そうした企業と合弁を組み、中国を活用して製造コストを下げるとともに、中国市場での販売を後押しするのが狙いだ。


 上海日建の挑戦は、いままさにはじまったばかりだ。