商社は「変化対応業」 IoT 導入で顧客の設備の 予知保全実現を目指す

山善(上海)貿易有限公司
会員番号:54315
所在地:上海市徐汇区宜山路1388号民润大厦1号楼1層B座 電話番号: 021-5445-2266 担当者:田園

 工作機械や産業機械などを扱う大手専門商社・山善(大阪市西区)は、11カ国で18現地法人68事業所を展開しているが、2016年にUSA営業本部(シカゴ)、台湾地区営業本部(台北)、アセアン営業本部(バンコク)、中国営業本部(上海)を設立。本部長を本社の執行役員が務めることで意思決定のスピードを速め、経営の効率を向上させることが狙いだ。その一角が中国大陸であることは、同社が中国を重視する姿勢の表れである。

「エンジニア力」と 「提案力」に強み


山善(上海)貿易有限公司 山善は華東、華北内陸地区をカバーする「山善(上海)貿易有限公司」と華南地区をカバーする「山善(深圳)貿易有限公司」「山善(香港)貿易有限公司」を中国営業本部とし、3社体制19拠点で中国大陸で展開している。さらには台湾地区現地法人「山善股份有限公司」の子会社「創善貿易(深圳)有限公司」が2011年に設立され、中国大陸に進出している台湾地区企業向けにもアプローチしている。


 同社の強みは、「エンジニア力」と「提案力」にある。山善の海外法人には、販売した機械の据え付けやメンテナンスなどのアフターサービスを行う「技術部」が存在する。山善中国では進出当初からそれを重視してきた。エンジニアは定期的に主力製品についてのトレーニングを受け、すぐにユーザーの元に駆けつけられる体制を整え、交換頻度の高いパーツに関しては在庫も確保している。目下、中国営業本部で抱える約400名の社員のうち、エンジニアが78名を占める。



設備の予知保全を目的に 独自の「IoT」開発に着手

山善(上海)貿易有限公司 製造業にとっていちばん困るのは、設備が停止し、生産がストップしてしまうことだ。山善中国では微信( WeChat)を活用し、それを最小限に抑えるための取り組みを行っている。現場で設備が停まってしまったら、ユーザーはそれをスマートフォンで撮影し、同社技術部のアカウントにそれを送る。すると、エンジニアがすぐさま原因を判断してレスポンスしてくれるのだ。メールよりも迅速に対応できるので、軽微なトラブルであればその場で解決ができる。


 同社ではその上をいくサービスも検討している。設備が故障する要因は、スピンドルやモーターなどさまざまだが、必ず予兆がある。「IoT(モノのインターネット)」を自社で開発し、顧客の設備に導入することで故障の前兆をあらかじめ察知し、予知保全しようというのだ。


 部品の交換が必要になれば、新しい部品が届くのは早くても翌日で、在庫がなければさらに数日がかかり、生産のロスは大きい。故障の前兆をあらかじめ把握できれば、生産計画に余裕のある時期に交換を済ませることができるのだ。


 しかし、それを実現するのは容易ではない。音や振動、温度、熱をセンサーでモニタリングし、それらの情報を解析して一定の条件が揃ったときに、部品の交換が必要になる。ところが工場によってゴミや油まみれであるなど環境が違うし、ワークの重量や使用している刃物によってもそれらの条件は変わってくる。予兆の方程式を導き出すためのアルゴリズム構築には、膨大なデータの蓄積が必要となるのだ。同社の技術部がデータを有していることに優位性はあるものの、顧客からのヒアリングも重要になる。ソフトウェア会社とも協力しながら、2018年中の導入を目指している。


 「IoTには段階がある。まずは現在の稼働状況を認識する“見える化”からはじめるだけでも、生産効率が変わる」と小澤一之総経理は指摘する。


 同じ機種の設備を複数台使用している場合、機械ごとに稼働率のばらつきがあることは少なくない。見える化によってそれがわかるので、生産効率を向上させることができるのだ。効率化向上によって、設備の台数を減らせる可能性もあるかもしれない。それは同社にとって、販売機会の減少につながる。しかし「いちばん大事なのは顧客満足度。設備の停止を完全になくすのは難しいが、少しでも減らすような提案をし、それでお客さまが喜んでくだされば、ビジネスパートナーとして山善を選択していただけるはず」と小澤氏は強調する。



山善(上海)貿易有限公司

EV の拡大を見据え プロジェクトチームを発足

 山善中国の17 年の業績は、自動車関連と電子機器製造受託サービス(EMS)向けが牽引し順調に推移している。しかし、その2つの業界が今後も好調であり続ける保証はない。各業界の現況を見極める必要があり、山善本社の長尾雄次社長は商社を「変化対応業」と位置付けている。


 「 変化に対応できるようにアンテナを張って情報を収集し、時代の流れに合わせてお客さまに提案する商品を変えていかなければならない」(小澤氏)


 その姿勢により、山善中国では自動化や半自動化設備についてもいち早く提案してきた。得意としているブラザーのマシニングセンタと多関節ロボットを組み合わせた自動化ラインは、多くの導入実績がある。先日は、中国系大手自動車部品メーカーから、加工、研磨、測定、熱処理までの全自動大型ライン設備を受注している。


 最近販売量が増えているのは環境関連製品だ。工場からは排水や排気などさまざまな環境負荷物質が排出されるが、昨今の環境規制強化を受け、それらを低減する製品を多く提案している。


 そして、同社が将来を見据え注視しているのは、電気自動車(EV)だ。EV が自動車の生産量全体に占める割合はまだ微々たるものだが、成長は著しい。EV はエンジンやミッションが電池、モーターなどに取って代わり、切削部品が少なくなる。同社ではプロジェクトチームを立ち上げ、どんな提案ができるかを検討するため、情報収集にあたっている。


山善(上海)貿易有限公司

 目まぐるしく変化を続ける中国の製造業。山善中国は、常に顧客が抱える課題や必要としているものを見極め、それに合った最適な製品やサービスを提案していく。