摩擦軽減のプロフェッショナル独自技術で六価クロムフリーへ


Techniques Surfaces (Thailand) Ltd.


自動車や家電など製造業が集積するタイの市場。その現場で、あまたある部品生産を支えている表面工学の専門家集団がいる。フランスに本社を置く「HEF グループ」のタイ法人「Techniques Surfaces (Thailand) Ltd.」だ。現地法人としては2013年1月の設立とまだ日は浅いものの、グループが持つ高い技術力と国際的なネットワークによるサポート体制は他社の追随を許さない。対象となる顧客層も、機械生産からエネルギー、航空宇宙産業へと幅広く、将来的なターゲット層も無限だ。純粋な民間研究機関として発足した同社グループの「滑り」に掛ける思いを聞いた。


Techniques Surfaces (Thailand) Ltd.


■トライボロジーのリーディングカンパニー

 自動車部品や工作機械部品など、滑りながら動くあらゆる「摺動部品」全般に対応できるのがHEF グループの技術だ。会社設立は20世紀半ば、1953年のこと。構成する部品が破損しては、ただ交換して廃棄するだけだった当時の機械設備。「もったいない。部品そのものがもっと壊れにくくならないか」という思いから創業者らが独立して始めたのが、企業や団体などから請け負う「摩擦」をめぐる軽減委託研究事業だった。

 1970年ごろからは汎用製品の研究開発にも着手。本格的な営業活動も始まった。このころ市場では、産業の生産性向上と経済損失軽減の観点から摩擦をテーマとした新しい科学技術である「トライボロジー」という研究概念が次第に語られるようになっていた。間もなく、折り紙つきの高い技術力を持つ民間研究機関としての同社の存在が評価を集めるように。トライボロジー分野におけるリーディングカンパニーの登場だった。

 HEF グループは、本部のあるフランスに置く研究機関「中央研究所」に加え、世界各地に配置される製造法人(工場)と販売法人の3部門から成る。タイに置かれているのは後者の二つで、それぞれの代表をアジア市場の責任者、金森高司Directorが統括する。自動車業界出身の同氏。「これだけの高いポテンシャルを持つ表面処理加工技術の企業がタイの市場に存在していることを是非知っていただきたい」と話す。


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■DLCマシンと塩浴軟窒化処理


 タイ法人の工場には主要な生産ラインが2系統存在する。一つは同社グループが独自に開発・製造したDLCマシン。自動車部品の小型化・低燃費化を実現するには今や欠かすことのできないのが表面処理加工だ。真空の中でプラズマを発生させ、ダイヤモンドの強度に近いカーボン膜をコーティングさせるのがこの装置。これにより強度と耐久性をこれまで以上に増加させ、焼き付き防止とフリクション(摩擦)の低減が図られるようになった。最高のチューニングは、エンジン回りのほかトランスミッションなどの駆動部品にも実用が可能という。

 アマタナコン工業団地内の専用建屋には現在、室温・湿度が一定のクリーンルームにDLCマシンが2台設置してある。これを将来は8台まで増設が可能とする。「高い性能が求められる自動車部品に特化したマシン。これほどの高性能のマシンはタイには他にありません。需要に応じて拡張していく計画です」と金森氏は解説する。

 もう一つの主な生産ラインが、「タフトライド」という名で商標登録している塩浴軟窒化処理のためのそれだ。摂氏600度に近い塩浴(ソルトバス)に被処理物を浸し、表面に極めて薄い窒化層(膜)を形成させるのが塩浴軟窒化処理技術。これにより被処理物の表面が固くなり、金属疲労への耐久性が増すという。形成される表面セラミック層の厚さは10ミクロンにも満たない。

 例えばこれをプラスチック射出成形の金型部品に応用してみる。強度や耐久性は飛躍的に増し、完成品に傷がつくこともめったになくなる。同社では合わせて潤滑剤の研究・提供も進めており、全体的な歩留まりの向上にも努めている。金森氏も「軟質なプラスチック部品の生産においても金型は摩耗し、傷んでいきます。摩耗すれば不良品の割合も高くなる。これを可能な限り低減するのが当社の技術。是非一度、お試しください」と話す。


Techniques Surfaces (Thailand) Ltd. Techniques Surfaces (Thailand) Ltd.


■産業機械から民生品まで


 現在のタイ市場を「政治の統制はとれており、これ以上は悪くならないでしょう」と見ている。「自動車などの潜在需要は高い。経済政策によって好循環が生まれれば、爆発的な需要が生まれるだけの高いポテンシャルはまだまだタイ市場には存在する」とタイ政府の今後の政策にも期待する。その一方で、金森氏が考えるのは、日本市場との連携だ。

 メッキ処理一つ取ってもなお技術力や精度において開きのある日本と東南アジアの市場。タイを含む中進国の市場では従来のクロムメッキから塩浴窒化処理への移行がようやく始まったばかり。ここに連携の可能性があると同氏は見る。「タイなど東南アジア市場の技術進歩は加速度的です。今までは先進国から中進国・後進国に向けた一方通行の流れが中心でしたが、今後は逆の流れも生まれてくる可能性は十分にある。それに備えた対策が必要です」と話す。

 異業種・他業種への進出も貪欲だ。すでに重厚長大産業を中心に多彩な業界に足を伸ばしている同社。鉄道、重機、運輸、港湾、ダム、地下資源採掘、人工衛星などその分野は多岐に渡る。これに加え近年は、小型モータや医療機器などミクロンの世界にも事業展開を進めるようにもなった。「あらゆる産業機械から民生品まで。滑って動くものなら何でも。受け皿の広いところが当社の技術の特徴です」(金森氏)。挑戦は始まったばかりだ。


同社の代表的な処理技術

DLCコーティング
ダイヤモンドの硬度に近いカーボン膜をコーティング
・焼き付き防止、摩擦低減
・低い摩擦係数(TiN等の従来の硬質膜の1/5~1/10)

タフトライド(塩浴軟窒化処理)
10μのセラミック層を成形し、金属疲労への耐久性を向上
・型寿命を延ばすことによる生産コスト低減
・従来の熱処理(浸炭処理、高周波焼き入れ等)の代替処理 ・他の表面コーティング層(*1)の代替処理
・離型性が改善されることより、製品表面の仕上がり状態が向上
*1  硬質クロムメッキ、無電解ニッケルメッキ等



Techniques Surfaces (Thailand) Ltd.

700/15 Moo 6, Amata Nakorn Industrial Estate, T.Nong Mai Muang Chonburi,        Chonburi 20000

お問い合わせ先:金森
+81 80-5685-4343
038-213-818-20
tkanamori.hefdurferrit@hef.fr

http://www.tsthailand.co.th/copy-of-home 



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