オールジャパンによる相互扶助で 中国自動車産業に切り込む日本自動車部品工業団地

日本自動車部品工業団地(JAPIC)
運営・管理:東龍日聯(丹陽)企業管理有限公司
所在地:江苏省丹阳市经济开发区通港西路68 号 
電話番号:0511-8699-7171(東和男)

 

上海から北西に200 キロ、人口100 万人弱の江蘇省丹陽市——東和男氏は、この地を第二の人生のスタート地点に選んだ。長年構想を温めていた「日本自動車部品工業団地(JAPIC = Japanese Auto Parts Integration in China)」。つまり、日本の自動車部品メーカーが集積する工業団地を立ち上げたのだった。


中小企業に魅力的な3年間賃料無料


日本自動車部品工業団地(JAPIC)完成車メーカーを頂点としたピラミッド構造になっている自動車産業では、一般的にティア1やティア2までは企業規模が大きいが、下に行くほど小さくなっていく。資本力や販売力がないがゆえに、海外進出に踏み切れない企業も少なくない。しかし、自動車産業の主戦場が海外にシフトしていく中で、「日本の中小部品メーカーは、座して死を待つのか」(東氏)。東氏は、トヨタ自動車に勤務していた頃から、そうした部品メーカーの行く末を案じていた。そこからJAPIC の発想は生まれた。一社一社の規模は小さくても、集積することで、大きな集団となることができる。


「同じような規模の部品メーカーが集まれば、人の採用や設備の導入、材料の購入、販売先など共通する問題がある。その情報を共有し、相互扶助によるシナジー効果を狙う」(同)


その構想を実行に移すことは、中国に20 年近く駐在していた東氏にとって、それほど難しいことではなかった。地方政府との付き合いが多く、経済顧問を務める市・区も少なくない。東氏がJAPIC の構想を打ち明けると、それらが候補地として名乗りを上げた。中には、上海市近郊の開発区もあった。そんな中から丹陽を拠点に選んだのは「いちばん環境がよくなかった」(同)からだ。

 

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大きな投資ができない中小企業にとって、固定費は低ければ低いほどいい。丹陽は、物価や人件費、不動産価格が低かった。しかも丹陽開発区からは、3年間賃料無料という好条件を勝ち取ることに成功した。自動車は、量産を開始するまでに時間がかかる。たとえ部品が採用されても試作の連続であり、収入を得るまでに最低でも1年半はかかる。自動車部品メーカーにとって、3年間の賃料無料は魅力的だった。しかも賃料相場は上海の3分の1から4分の1なので、4年目からの負担も大きくない。

 

一方、開発区側は税収が得られるし、日系企業が多数進出することで、地域の雇用創出にもつながる。実際、いまでは入居企業22社が合計約500 名を雇用している。

 

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即断るメーカーに次はない


東氏が2011 年7月にトヨタ自動車を退職すると、第1 期工事がすぐに着工し、21 万平米の敷地に12 万平米のレンタル工場を建設した。2012 年の開業では、最初は7社集まればいいと考えていたが、蓋を開けてみると、11 社が集まった。しかし、その後は日中関係の悪化が影を差し、思い描いていたようには入居者数は伸びなかった。それでも22 社まで増え、シナジー効果は確実に現れている。「お客さまからよく問われるのは、一貫生産。ここにはいろいろな会社さんが入居しているので、自社ではできないものがあっても、工場団地内で完結できる」と「丹陽旭鈴精密零部件有限公司」の江川君広総経理はその効果を説明する。


たとえ難しい依頼があっても「できませんとは絶対にいうな」と東氏は入居企業に強調している。1社ではできなくても、JAPIC 内で相談をすれば、どこかが助けてくれるかもしれないからだ。「すぐに断る業者には、次に発注しない」と東氏はトヨタ自動車時代の経験を語る。

日本自動車部品工業団地(JAPIC)またJAPIC では販路開拓のための支援として、積極的に全国各地の展示会に出展している。入居は日本企業にこだわっているが、販売先は欧米や韓国メーカー、さらに輸出もターゲットとしている。いずれは中国系も開拓していきたいとしている。

 

日本ではGDP の鈍化ばかりが報道されるが、中国の自動車市場は、相変わらず二桁で伸びている。しかしこの伸びは、「2020年で終わる」と東氏は予測する。中国の自動車産業は、成熟期へ移行していくのだ。入居企業は平均すると、毎年2倍の成長を実現している。しかし2020 年を迎えたら、そこまでの高い成長率を維持するのは難しくなるかもしれない。「2019 年頃までに中国に進出していない企業は、市場参入に間に合わない」と東氏は警鐘を鳴らす。


開発区の支援で地元企業との協業も

JAPIC には、丹陽経済開発区の協力も欠かせない。JAPIC 内には、同区の出先機関もあり、職員が常駐している。工員のための寮や食堂を運営しているほか、拡販や仕入先の斡旋もしてくれる。

日本自動車部品工業団地(JAPIC)
同区の孔偉局長は2017 年に強化すべく3本柱を掲げている。「工員採用支援」「販売先開拓支援」「中日産業交流協会発足」だ。

採用に関しては、これまで工員は、周辺地域から採用してきたが、人材が枯渇しつつある。もう少し範囲を広げる必要があるため、政府機関を活用して採用活動をする計画だ。

中日産業交流協会は、JAPIC 内の日系企業と丹陽市の中国企業が協業しようという試みだ。「丹陽市の商工会には、数十社が加盟している。日系企業が彼らと交流することで、仕入れや販売先が広がる。逆に中国企業は、日系企業と付き合うことで、日本流の品質管理の勉強になるし、日本企業と取引することが商売にもつながる」と孔氏が意欲を見せれば、江川氏も「日系だけでものを作っていてもコスト圧力には対応できないので、うまく使い分けをすることで、お互いがウィン・ウィンの関係になれる」と歓迎する。

昨今、日中関係が幾分改善されたことで、JAPIC には現在、10 社が進出を検討している。将来的には、第2期工事で100社規模にしたいと意気込む東氏。JAPIC は、中国の自動車産業にとって欠かせない存在となる。

 

日本自動車部品工業団地(JAPIC)【JAPIC入居企業紹介】

丹陽旭鈴精密零部件有限公司

一井汽車部件(丹陽)有限公司

新波密封部件(丹陽)有限公司

埼玉鋁合金精密鍛造(丹陽)有限公司

大進精密機械(丹陽)有限公司

丹陽光精工精密機械有限公司

高斯達楽工業炉(丹陽)有限公司

 

 


丹陽旭鈴精密零部件有限公司
株式会社旭工業所
FNA会員番号:24819


TEL:0511-8699-7090(江川君広総経理)

 

日本での70 年の経験を元に、鉄、鋳物、アルミと、あらゆる金属を加工。特に高精度の薄物加工を得意としている。エンジンやミッションを中心に、さまざまな部品に採用。中国企業の価格競争力に対抗するため、コスト削減に注力している。供給先は日系が主だが、欧州系の開拓を目指す。丹陽旭鈴精密零部件有限公司

 


一井汽車部件(丹陽)有限公司
一井工業株式会社
FNA会員番号:58953


TEL:0511-8699-7068(小郷博之総経理)

 

プレス・溶接に従事。給油口のフタや外板部品などボディ部品を手がけている。とりわけ得意としているのは、外観品質が非常に厳しい部品。日本では、納品先のほぼ100%が自動車業界だが、中国ではそれにこだわらず、家電や住宅関係など他分野にも領域を広げていく計画だ。一井汽車部件(丹陽)有限公司

 


新波密封部件(丹陽)有限公司
日本パッキング工業株式会社
FNA会員番号:61197


TEL:0511-8699-7123(樫原一彦総経理)

 

水、油、吸気、排気系のガスケットを製造。素材はソフト材から複合材までさまざま取り揃えているが、環境や人体に悪影響を与えない材料のみを採用。10 個の小ロットから数万個まで対応可能。日本では建設機械やトラックなど大型車両が得意だが、乗用車部品もチャレンジしていく。新波密封部件(丹陽)有限公司

 


埼玉鋁合金精密鍛造(丹陽)有限公司
埼玉プレス鍛造株式会社
FNA会員番号:54589


TEL:0511-8699-7122(柴崎昇総経理)

 

アルミ熱間鍛造のスペシャリスト。主に高級車向けサスペンションの部品を得意としている。高度な技術を要するアルミ熱間鍛造は、中国で可能なメーカーはほぼ皆無だという。工場見学に訪れた欧州メーカーに認められ、目下、売り上げの8割を欧州系が占める。埼玉鋁合金精密鍛造(丹陽)有限公司

 


大進精密機械(丹陽)有限公司
株式会社大進製作所
FNA会員番号:61895


TEL:0511-8626-6566(崔超波・執行総経理)

 

精度の高い冷間鍛造を得意としている。日本では経験のない、自動車産業を狙い中国に進出してきたが、それだけにこだわらず、JAPIC 入居企業の設備も活用しながら幅広い分野をターゲットとしている。中国で発掘した製品を輸出して日本の顧客の調達を支援する案件も増えている。大進精密機械(丹陽)有限公司

 


丹陽光精工精密機械有限公司
光精工株式会社
FNA会員番号:61846


TEL:0511-8699-7106(小池一郎総経理)

 

日本では駆動系部品、ステアリング部品、エンジン部品、軸受け部品などを手がけ、特にプロペラシャフト用ユニーバーサルジョイントを得意とする。中国では、ユニバーサルジョイントやエンジン、ミッション関係部品を販売している。切削から熱処理、研削まで一貫受注が可能。丹陽光精工精密機械有限公司

 


高斯達楽工業炉(丹陽)有限公司
東京瓦斯電炉株式会社
FNA会員番号:24238


TEL:0511-8699-7070(中島康弘総経理)

 

主に自動車の中で使われるネジ・バネの熱処理設備(標準品・オーダー設備)を製造。小型のテンパー炉であれば、中国メーカーよりも温度性能に優位性がある。炉内温度差が少なく、均一処理が可能。コスト削減にも注力しており、今後は中国企業を積極的に開拓していく計画だ。高斯達楽工業炉(丹陽)有限公司